人類の共通財産である文化財は,保存と公開のバランスや紛争による破壊,流出の問題に直面している。文化財は唯一無二の存在であり,その真正性は本来,複製が不可能であるが,東京藝術大学ではアナログ技術とデジタル技術を混在させることで,オリジナルの質感,形状,素材,色彩,文化的背景までをも再現する「クローン文化財」の技術を開発し,特許権を取得した。本稿ではクローン文化財の開発目的と意義,今後の展望について,(1)日本文化の特質,(2)芸術のDNA,(3)クローン文化財の制作手法と展示例,(4)平和外交への活用,という4点から述べる。
1992年に設立され,系統的レビューの手法を確立したコクランは,現在130か国・地域を超える3万7,000人の人々が協力して,手軽に無料で入手できる信頼性の高い医療情報を提供している。設立当初から,研究や診療の意思決定に医療消費者(患者)の参加を真摯に取り組んできた。医療消費者はコクランの系統的レビューの査読を行い,設定したゴールが適切か,コクランのメッセージがわかりやすいかなどに重点をおいてチェックする。完成したコクランレビューには抄録のほか一般語訳が必ず付けられ,いくつかの国・地域では,研究教育機関だけではなく,市民に広く公開されている。研究や診療政策現場における医療消費者参加の現況を踏まえ,今後,医療消費者が「どのように参加するか」が重要になると考えられる。
人工知能に関して第一線で活躍している4人をパネリストに招いて,トークセッションを開催した。セッションのテーマは「AIとは何か」「AIによって人間の仕事はどう変化するのか」「これから身に付けたい能力」「若者への提言」などである。パネリストの発言はAIの真実やAIの現状を知り,AIとの付き合い方を考える大きな手がかりとなる。
人類遺伝学あるいはゲノム医学分野においては,医学研究のみならずゲノム医療の発展のためにも,疾患遺伝子変異のデータ共有の重要性が高まっている。日本人類遺伝学会は,独自の簡易データベースを備えたオープンアクセスジャーナル「Human Genome Variation」を2014年から出版している。その構想から創刊まで,さらに現状と今後の課題を述べる。
インターネットという情報の巨大な伝送装置を得,おびただしい量の情報に囲まれることになった現代。実体をもつものの価値や実在するもの同士の交流のありようにも,これまで世界が経験したことのない変化が訪れている。本連載では哲学,デジタル・デバイド,サイバーフィジカルなどの諸観点からこのテーマをとらえることを試みたい。「情報」の本質を再定義し,情報を送ることや受けることの意味,情報を伝える「言葉」の役割や受け手としてのリテラシーについて再考する。
連載の最終回は,「情報学的転回」を取り上げる。20世紀に社会的価値観の変容をもたらした「言語学的転回」を踏まえ,情報学的転回は情報という概念を中心にして知の枠組みそのものを変える。AIブームに沸くいま,改めて真の情報教育の必要性を説く。
「情報管理」誌は,創刊以来60年間にわたってその時々の科学技術情報に関するトピックスをとらえてきた。2007(平成19)年度に50周年を迎えるに当たって50年間の記事等のまとめを行った。今号をもって休刊となるに当たり,それ以降10年間の記事の一部を紹介する。最近の情報流通分野の変化は非常に激しいが,記事を通じて振り返ることで最近10年間に起きた変化を俯瞰したい。
「この本! おすすめします」は、毎月一人の執筆者がテーマを決めてお薦めの本を紹介する連載である。この連載は、選書を通じて選者をも紹介する意図で企画した。11年半(2006年10月~2018年3月)続いたこの連載の中で紹介された全360冊をリスト(PDF)にした。
左欄15~16行目の記載内容に誤りがありました。著者(山本一治氏)からの申し出により訂正します。
誤:地元で見つけられなかった終戦直後の前橋市の写真を米国国立公文書館で発見したという。
正:地元で見つけられなかった終戦直後の前橋市の写真を米国で発見したという。