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情報界のトピックス
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2012 年 55 巻 8 号 p. 616-619

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検索サービス訴訟でGoogleと米国出版社協会が和解

10月2日,Googleと米国出版社協会(Association of American Publishers: AAP)は,Google検索サービスをめぐる訴訟で和解に達したことを発表した。Googleによる図書館蔵書のスキャニングプロジェクトは,著作権侵害としてAAPのメンバーである5つの出版社(McGraw-Hill社,Pearson Education社,Penguin Group(米国),John Wiley & Sons社,Simon & Schuster社)により,2005年10月19日に訴訟を起こされた。2008年に提案された和解案は,2011年にDenny Chin判事により却下されていた。今回の和解は訴訟当事者間でなされたもので,裁判所による承認を必要としないことから,7年間にわたる訴訟は終了することになる。和解は著作権保持者の権利と利益を認め,その結果米国の出版社は,Googleによってデジタル化された自社の図書や雑誌を,Googleブック検索やGoogle Playを通しての購入に提供するか,あるいは撤去するかを選ぶことができる。撤去しない出版社には,自社が利用するためにデジタルコピーを受け取るというオプションが与えられる。和解とは別に,米国の出版社はスキャンされた作品の利用に関して,Googleと個別の協定を結ぶことも依然として可能である。前回の和解の試みにおいてChin判事が行き詰まりの原因として指摘したオーファンワークス(孤児著作物)の問題には触れられておらず,オーファンワークスの検索を引き続き可能とするための下地が作られたとの見方もある。合意内容の他の詳細は秘密にされていて知ることはできない。何らかの補償が伴われているかどうかも不明である。Googleの戦略的パートナーシップのTom Turveyディレクターによれば,Googleブック検索から手を引く出版社には,2,000万件を超えるスキャン済み図書の中から,撤去しなければならない図書のリストを差し出すためのメカニズムは整っているという。既にいくつかの出版社が,Googleブック検索とGoogle Playでの購入を許可する協定にサインしたことを,Turvey氏は明らかにしている。AAPのTom Allen会長兼CEOは,「デジタルサービスが,著作権保持者の権利を尊重しながらも,コンテンツを見いだすための革新的な手段を提供できることを示している」と和解を喜ぶ言葉を述べた。なお,和解が集団訴訟のステータスをめぐって係争中の,Googleと作家組合(Authors Guild)の間で行われている訴訟に影響することはない。

(http://www.publishers.org/press/85/)(http://www.publishersweekly.com/pw/by-topic/digital/copyright/article/54247-publishers-settle-google-books-lawsuit.html)(accessed 2012-10-10).

PenguinとMacmillanが電子書籍パイロットプロジェクトを開始

今年6月に,電子書籍貸出のパイロットプロジェクトを発表したPenguin Groupが,3M社の図書館向け電子書籍貸出サービスである3M Cloud Library,ニューヨーク公共図書館(New York Public Library: NYPL),ブルックリン公共図書館(Brooklyn Public Library: BPL)と協力して,そのプロジェクトを10月1日に公式に開始した。NYPLとBPLは年ごとのライセンス契約の下で,Penguinの電子書籍を出版の6か月後から購入することができる。1年以上利用したい書籍については,3M Cloud Libraryを通してライセンスを更新しなければならない。図書館利用者はWindows PC,iPhone,iPad,Nooks,Androidなどのデバイス上で,3M Cloud Libraryのアプリケーションを利用してそれらにアクセスし,借り出すことが可能になる。Penguinは,2011年11月に新刊電子書籍の貸出を禁止し,作者の著作権のセキュリティーに関する懸念の解決までは,米国図書館への新刊電子書籍の供給を保留すると発表し,米国図書館協会(American Library Association: ALA)の批判を受けていた。Penguinの電子書籍は年末までには,3M Cloud Libraryのすべての顧客が利用できるようになると期待されている。

これまで長いこと図書館に電子書籍を販売するのを拒否してきたMacmillan社も,Penguin Groupとは別個に,米国の公共図書館での電子書籍貸出をテストするパイロットプロジェクトを開始することがわかった。Macmillan社は,最終案をまとめている最中であり,準備ができたら発表すると述べ,今のところ詳細を明らかにしていない。Penguin GroupとMacmillan社のパイロットプロジェクトが成功すれば,6大出版社のうち,図書館への電子書籍販売を完全に拒否するのはSimon & Schuster社のみとなる。しかし図書館に対して,電子書籍の価格を,Hachette社は2倍以上,Random House社は3倍近く値上げすると通告していることを考えると,喜んでばかりもいられない状況である。

(http://news.3m.com/press-release/company/3m-cloud-library-helps-penguin-group-usa-enter-ebook-lending-market)(http://www.publishersweekly.com/pw/by-topic/digital/content-and-e-books/article/54083-macmillan-poised-to-test-library-e-book-model.html)(accessed 2012-10-10).

ジョージア州立大学の電子リザーブ訴訟

ジョージア州立大学(Georgia State University: GSU)の電子リザーブ(指定図書)をめぐる訴訟は,連邦地方裁判所のEvans判事が5月に,申し立て99件のうち,5件を除き公正使用(フェアユース)か,あるいは問題が無いとの判断を示したのに対して(vol.55, no.4の本欄にて既報),原告(Cambridge大学出版局,Oxford大学出版局USA,Sage出版社)が9月10日上告することを決定した。発表した声明の中で原告は,「著者の著作権を守り,バランスのとれた実行可能な解決策を主導するためには上告する以外に手はない」と主張している。判事は既に,原告側がジョージア州立大学の訴訟費用を支払わなくてはならないと告げていたが,原告が上告を決めていたにも関わらず,訴訟費用決定の延期要求を拒み,弁護士費用2,861,348.71ドル,諸費用85,746.39ドルの計約300万ドル(約2億3,400万円)とする数字を9月30日に出した。この訴訟に資金を提供してきた米国出版社協会(Association of American Publishers: AAP)と著作権クリアランスセンター (Copyright Clearance Center)も困難な立場に陥ることになったわけである。

(http://chronicle.com/blogs/wiredcampus/publishers-will-appeal-e-reserves-decision-that-favored-georgia-state-u/39732?cid=at&utm_source=at&utm_medium=en)(http://lj.libraryjournal.com/2012/10/litigation/plaintiffs-must-pay-almost-3-million-in-gsu-legal-fees/)(accessed 2012-10-10).

「東日本大震災ビッグデータワークショップ」を開催

「東日本大震災ビッグデータワークショップ」が9月12日から10月28日までの期間で開催される。同ワークショップは,東日本大震災の発生直後から,テレビ,新聞,インターネットを通じて流れた大量の情報が,どのように発信され,流通したのかを,実際のデータを用いて検証する。参加者には,震災発生から1週間の間に実際に発生したデータが提供される。これらを改めて分析することで,今後起こりうる災害に備えて,どのようなことができるかを議論し,サービスを開発することができるとしている。同ワークショップは,Twitter JapanとGoogleが幹事を務め,データ提供パートナーとして,朝日新聞社,JCC,ゼンリンデータコム,日本放送協会,本田技研工業,レスキューナウの8社が参加する。参加する研究機関,企業,団体,開発者は,ワークショップ期間中,オンラインなどで積極的に情報や意見を交換するとともに,10月28日に開催予定の報告会で成果を共有することが求められている。分析用に提供されるデータには,震災発生当日から1週間分の全日本語ツイートデータ,検索トレンド,新聞記事,NHKの放送文字データ,東京キー6局の災害に関する全テレビ情報要約文,被災地域の混雑度データ,東日本地域の通行実績情報,鉄道運行情報・緊急情報・被害状況サマリーが含まれる。

(https://sites.google.com/site/prj311/pr?pli=1)(accessed 2012-10-10).

IAEA,福島原発放射線DBを公開

国際原子力機関(IAEA)は9月7日,2011年3月の福島第一原子力発電所での事故発生以降に,日本で測定された放射線量のデータベース「Fukushima Monitoring Database」(FMD)を全加盟国と一般に向けて公開した。IAEAの事故および緊急事態対応センター(Incident and Emergency Centre)が作成した同DBは,福島第一原子力発電所の周辺および遠隔地における放射線量測定結果について,線量率や,植生や水,土壌などの環境サンプルデータなどの検索やダウンロードが可能である。

(http://www.iaea.org/newscenter/news/2012/fukushimadb.html)(accessed 2012-10-10).

首相官邸,「LINE」公式アカウントを開設

首相官邸は10月5日,無料通話・メールスマートフォンアプリ「LINE(ライン)」に,「首相官邸」公式アカウントを開設したと発表した。内閣官房内閣広報室が運用する。行政機関によるLINE公式アカウントの導入は初。LINEは,ユーザー同士が無料で音声通話・メールを利用できるスマートフォンアプリで,2011年6月のサービス公開以来,若者を中心に急激にユーザー数を増やしている。現在,世界で6,500万人,国内3,000万人が利用している。「LINE公式アカウント」は,当該アカウントを「友だち追加」したユーザーに対して,メッセージを直接配信できる機能。首相官邸ではこれまでも,Twitter,Facebookなどのソーシャルメディアを活用した情報発信を行っており,若者に人気のあるLINEを利用することで,「従来よりもさらに幅広い方々に,官邸からの情報に親しんでいただくこと」を目指すとしている。

(http://about.naver.jp/press/press_detail?docId=1525)(http://www.kantei.go.jp/jp/headline/news_line.html)(accessed 2012-10-10).

Facebook,ユーザー数10億人を突破

Facebookは10月4日,月間アクティブユーザー数が10億人を突破したと発表した。最高経営責任者のマーク・ザッカーバーグ氏は,自らのFacebookページ上で,「10億人のつながりを支えることは,素晴らしいことであり,同時に謙虚な気持ちにもさせられます」と述べ,ユーザーに感謝の気持ちを表した。2004年にスタートしたFacebookは,2010年7月に5億人を超えており,わずか2年2か月でユーザー数を倍増させたことになる。

ユーザー数が10億人を超えたことで,地球上の7人に1人がFacebookを使っている計算になるが,実際の普及度は国によって違いがある。アウンコンサルティングが10月2日に発表した「世界40ヶ国のフェイスブック(Facebook)人口推移」によれば,日本のユーザー数は約1,552万人で,人口対比は12.1%。一方,世界では人口対比が50%を超える国が多く,アメリカ,カナダ,イギリス,デンマーク,スウェーデン,ノルウェー,オーストラリア,ニュージーランド,台湾,香港,シンガポールで50%を超えている。

(http://www.auncon.co.jp/corporate/2012/1002.html)(accessed 2012-10-10).

博報堂生活総研,20年にわたる生活者観測データを一般公開

博報堂生活総合研究所は9月27日,生活者意識の定点観測調査「生活定点」のデータ約1,500項目を無償で一般公開すると発表した。「生活定点」調査とは,1992年から20年にわたって隔年で実施している定点観測調査。同じ地域(首都圏・阪神圏)の同じ対象者設定(20~69歳の男女)に向けて,同じ質問を継続して投げかけ,その回答の変化を時系列で観測している。今回は,過去20年分の回答値を全体・性年代別・地区別に一覧できる数表(集計データ)と,時系列グラフを自動で簡単に作成できるプログラムを提供。質問は,衣,食,住,健康,遊び,学び,働き,家族,恋愛・結婚,消費,情報,メディア接触,社会意識,国際化と日本,地球環境など,あらゆる領域を網羅している。

(http://www.hakuhodo.co.jp/archives/newsrelease/7332)(http://seikatsusoken.jp/teiten/)(accessed 2012-10-10).

ネット犯罪被害者数は全世界で推定5億5,600万人

セキュリティー企業のシマンテックは9月5日,2012年「ノートンネット犯罪レポート」を発表した。この調査では,過去1年間のネット犯罪による直接的な被害総額は全世界で1,100億ドル(約8兆6,000億円)にのぼり,成人約5億5,600万人が巻き込まれたとしている。これは1秒間に18人(毎日150万人)が被害に遭っている計算になる。また,被害者1人あたりの平均被害額は197ドル(約15,000円)になる。日本では,過去1年間に920万人以上が被害に遭い,直接的な被害総額は約348億円にのぼる。傾向としては,昨年に比べて,ソーシャルネットワーク(SNS)や,モバイルデバイスにおける犯罪など新しい形態のネット犯罪が増加しており,SNSユーザーの39%がハッキングや詐欺などの被害に遭っているとしている。同レポートの数値は,24か国,13,000人以上のオンラインユーザーの回答に基づいて算出された。

(http://www.symantec.com/about/news/release/article.jsp?prid=20120905_02)(http://www.symantec.com/ja/jp/about/news/release/article.jsp?prid=20120919_01)(http://now-static.norton.com/now/en/pu/images/Promotions/2012/cybercrimeReport/2012_Norton_Cybercrime_Report_Master_FINAL_050912.pdf)(accessed 2012-10-10).

 
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