STAP細胞(刺激惹起性多能性獲得細胞)の作製に成功したユニットリーダーの小保方(おぼかた)晴子博士(理化学研究所)に注目が集まっています。ついには小保方さんご本人から報道関係者に向けて,「研究成果に関係のない報道が一人歩きしてしまい,研究活動に支障が出ている状況」で,「STAP細胞研究の発展に向けた研究活動を長い目で見守って」とのお願いがWeb掲載される事態となりました。
研究以外のファッションに関して質問攻めにするのは論外ですが,研究に取り組む思いや研究成果はぜひ伝えて欲しいと思います。しかしそのために肝心な研究活動が滞るとしたら本末転倒です。
弊誌も,注目の分野を紹介してもらいたいとお願いした相手に,時間がとれないからと辞退される経験を何度も重ねています。研究・実務の時間を奪うと考えると,安易な執筆依頼はとてもできません。
著者として寄稿することのメリットは何か,と真っすぐに尋ねられたこともあります。社会貢献の一種とお考えください,このテーマについて解説することで研究に対する世間の理解が深まると思います,とお答えした記憶があります。
今号冒頭の記事は,京都大学iPS細胞研究所(CiRA,サイラ)知財管理室長による講演内容の報告です。再生医療への研究が期待される多能性細胞の領域とそこにおける知的財産権に関してやさしく解説していただきました。
国家研究公正システム(NRIS,エヌリス)の連載は最終回です。研究不正の定義が多様であること,研究搾取・知的窃盗という行為が重要な位置を占めていること,著者とすべき人を著者としなかったり著者とすべきでない人を著者に含めたりする「不適切なオーサーシップ」も大きな問題となっていることなど,認識を新たにしました。不正を犯したと申し立てられた人の人権やプライバシーへの配慮なども含め,日本における今後の取り組みの参考になると思います。お読みいただければ幸いです。 (KM)