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JST国内収集誌の電子化状況調査報告(2012)
佐藤 正樹根上 純子堀江 隆加藤 治
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2013 年 56 巻 2 号 p. 93-101

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著者抄録

2008年1月に科学技術振興機構(JST)が行った国内の科学技術関連資料の電子化調査に引き続き,2012年2月~3月に同様の調査を行った。JSTが収集している国内資料(9,639誌)について電子化の状況を調査したところ,4,672誌(48%)が電子化されており,前回の調査と比較して9%向上していることがわかった。また,学協会の学術誌・学会誌の電子化率は60%であり,前回の調査と比較して13%向上している。さらに,電子化率の変化等について,考察した。

1. はじめに

国際競争力向上に不可欠な科学技術の発展のためには,優れた研究成果を国内外に迅速に発信・流通させ,さらに社会に生かしていくことが不可欠である1)。とりわけ,科学技術資料は,電子化することで,効率的かつ効果的に発信・流通できると期待されている。

科学技術振興機構(JST)では,国内の科学技術関連資料の電子化の状況を明らかにするため,2008年1月に,JST国内継続収集誌(以下,JST国内収集誌)9,098誌を対象に全文の電子化状況の調査を実施した2)

JST国内収集誌とは,JSTが文献情報データベース構築のため継続的に収集している国内の逐次刊行物であり,国内の科学技術分野の学術誌・学会誌,紀要等の研究報告,会議関連資料などを対象としている。調査の結果,全体の39%に当たる3,558誌の全文が電子資料で提供されていることがわかった。また,収集誌の中でも日本の学協会の研究報告・技術報告,会議要旨集,会議論文集といった資料の電子化率は,それぞれ29%,15%,18%と大変低いことが確認された。企業の研究者はこれらの資料に投稿することが多く,企業を中心とした研究動向や技術開発状況を知るために有効な資料であり,特に注目している。

学術情報においては,国際的に電子化による流通・発信が基本となっているが,前回の調査ではわが国は諸外国に比べ,研究成果の電子化が進んでいないことが判明した。

今回は,前回の調査から4年近くを経て,国内の科学技術関連資料の電子化の進展を確認するとともに,出版団体別,資料種別3),分野別に,国内誌の電子化の進捗状況について考察を行った。

2. 調査方法

今回の調査は,JSTが2008年1月に行った調査のフォローアップとしての位置づけもあり,比較のため,前回の調査と同様の方法で行った。

調査対象は,調査時点(2012年2月時点)のJST国内収集誌(9,639誌)である。JSTは国内資料の網羅的収集を方針としており,収集対象誌については毎年拡大を図っているため,2008年の前回調査での対象誌(9,098誌)に比較して541誌増加している。

電子資料は,冊子発行元である出版者(学協会や大学,公立機関,商業出版社,民間企業など)のWebサイトから直接提供される場合と,各出版者の資料を集約して提供される場合(アグリゲータサービス)があるため,電子化状況を正確に把握するために次の2つの調査を行った。

1つは,JST国内収集誌が,出版者サイトにおいて電子資料として提供されているか否かの調査(以下,調査1),もう1つは,調査1の補完を目的とした,国内の主要アグリゲータサービスにおけるJST国内収集誌の収録状況調査(以下,調査2)である。

2.1 調査1:出版者サイトにおける電子資料の提供

JST国内収集誌が出版者サイトにおいて電子資料として提供されているか否かを調べるため,インターネットを利用し,各出版者のWebサイトを参照して電子資料の提供状況について確認を行った(調査期間:2012年2月~3月)。

提供される電子資料のうち,契約者しかアクセスできない資料については,購読案内や資料に関する概要などの情報を参照した。また,オンラインのみならず,CD-ROMやDVD-ROMといった電子媒体による提供についても確認した。

電子化の判定基準についても,以下のとおり前回調査と同様とした。

  • (1)電子資料の提供ありと判断したケース:

  • ・   最新年や直近数年分,過去の一時期といった特定期間の範囲で全文が提供されていた場合

  • ・   資料の主要記事(論文形式の主要記事)のみといった一部内容の全文が提供されていた場合

  • (2)電子資料の提供なしと判断したケース:

  • ・   PRのため,最新号の記事のみが一時的に提供されていた場合

  • ・   本文ではなく,資料の抄録や要約のみが提供されていた場合

2.2 調査2:アグリゲータサービスにおけるJST国内収集誌の収録状況調査

JSTが把握する国内の6種のアグリゲータサービス提供機関より入手した収録誌リストを基に,JST国内収集誌との同定を行った。表1に6機関のサービス名称,収録誌数,データ取得時期を示す。

表1 (調査2)アグリゲータサービス一覧
サービス名称 機関名
AgriKnowledge 農林水産研究情報総合センター
ELBIS UMIN医療・生物学系電子図書館
CiNii 国立情報学研究所
Pier Online (株)サンメディア
メディカルオンライン (株)メテオ
J-STAGE 科学技術振興機構

資料の同定は,ISSNおよび資料名(タイトル名)をキーとして機械処理を行い,さらに,資料名の表記にゆれがあるもの等の同定を行うため,人手で同定を行った。

3. 調査結果

調査1,2の結果,JST国内収集誌9,639誌のうち電子資料として利用可能なのは4,672誌であった。これらについて,出版団体別,資料種別,資料分野別の傾向,サービス提供元から見た電子化状況等について分析した。

3.1 出版団体別の電子化状況

JST国内収集誌の出版団体を,表2の出版団体別定義に従い分類し,電子化状況の傾向を調査した。出版団体別の電子資料数および電子化率(電子資料数/JST国内収集誌数)が表3である。

表2 出版団体別定義
出版団体
政府機関 国立研究所,国立センター,国立病院,独立行政法人など
公共機関 公立研究所,公立センター,公立病院(都道府県,市区町村)など
大学等教育機関 国公立大学,大学附属研究所,大学研究センター,大学出版会など
学協会 学会,協会等の学術研究団体
会社等営利団体 印刷・出版が主たる業務ではない民間企業
商業出版社 印刷・出版が主たる業務とする民間企業
その他 上記以外の団体 例:財団法人,社団法人など
表3 出版団体別の電子化状況
今回の調査結果 前回の調査結果
出版団体名称 JST国内収集誌誌数 電子化 JST国内収集誌誌数 電子化
誌数 誌数
政府機関 366 244 67 412 229 56
公共機関 1,032 625 61 1,121 548 49
大学等教育機関 1,802 1,105 61 1,674 942 56
学協会 4,561 1,909 42 4,009 1,246 31
会社等営利団体 425 222 52 406 172 42
商業出版社 693 326 47 723 251 35
その他 760 241 32 753 170 23
合計 9,639 4,672 48 9,098 3,558 39

電子資料数は,学協会1,909誌で電子化率が11%向上したほか,政府機関244誌で11%,公共機関625誌で12%,会社等営利団体222誌で10%,それぞれ前回から向上している。電子化率が低下している団体種別はなく,全体としては電子化が進展していることが確認できる。一方,「その他」を除いて電子化率が低かったのは,商業出版社47%,学協会42%であった。この傾向は,前回調査とまったく同様であり,電子化率の向上幅についても,大学等教育機関が5%にとどまっている以外はいずれも10~12%向上と,出版団体別に大きな差異はみられなかった。

3.2 資料種別の電子化状況

資料の性質を示す資料種別の電子資料数および電子化率が表4である。年報や白書類,一般情報誌は「その他」に含まれている。なお,「研究報告・技術報告」とは,原著論文を主とする機関報告や技術レポートのことであり,大学の紀要はこちらに含まれる。また,会議関係資料として「会議論文集」は研究成果を論文形式にまとめたもの,「会議要旨集」は予稿集や概要集,抄録集の資料などである。

表4 資料種別の電子化状況
今回の調査結果 前回の調査結果
資料種別名称 JST国内収集誌誌数 電子化 JST国内収集誌誌数 電子化
誌数 誌数
学術誌・学会誌 2,478 1,460 59 2,207 1,036 47
研究報告・技術報告 3,138 1,836 59 3,085 1,555 50
会議論文集 662 167 25 614 112 18
実用誌・解説誌 965 373 39 917 244 27
会議要旨集 1,494 346 23 1,306 198 15
その他 902 490 54 969 413 43
合計 9,639 4,672 48 9,098 3,558 39

電子資料数においては,研究報告・技術報告1,836誌,学術誌・学会誌1,460誌の順に多く,実用誌・解説誌373誌,会議要旨集346誌,会議論文集167誌と少なく前回と同様の傾向がみられる。同じように,電子化率は,研究報告・技術報告と学術誌・学会誌の電子化率がともに59%と高く,実用誌・解説誌については39%,会議関係資料(会議論文集,会議要旨集)については20%台と電子化率が低かった。前回調査に比較して,学術誌・学会誌の電子化率は12%向上しているものの,59%にとどまっている。

3.3 資料分野別の電子化状況

JSTが独自に設定している資料分野別の電子資料数および電子化率が表5である。

表5 資料分野別の電子化状況
今回の調査結果 前回の調査結果
資料分野名称 JST国内収集誌誌数 電子化 JST国内収集誌誌数 電子化
誌数 誌数
医学 3,566 1,498 42 3,143 1,045 33
農林水産 1,302 706 54 1,281 598 47
科学技術一般 757 454 60 743 384 52
機械工学 536 286 53 540 250 46
環境工学 427 256 60 402 202 50
経営・情報システム工学 495 275 56 435 202 46
生物科学 478 235 49 398 187 47
建設工学 527 259 49 522 151 29
金属・鉱山・地球科学 440 213 48 424 148 35
化学 475 163 34 486 127 26
電気工学 249 149 60 255 108 42
物理学 245 108 44 236 85 36
原子力・エネルギー工学 120 65 54 127 43 34
その他の工学 22 5 23 24 6 25
未設定 - - - 82 22 27
合計 9,639 4,672 48 9,098 3,558 39

電子資料数は,医学1,498誌,農林水産706誌,科学技術一般454誌と多く,物理学108誌,原子力・エネルギー工学65誌と少なかった。また,電子化率は,科学技術一般,環境工学,電気工学が60%と高く,物理学,医学が40%台,化学が30%台と低かった。また,前回調査と比較して電子化率が大きく向上したのは建設工学,原子力・エネルギー工学で,20%の向上が見られたほか,電気工学でも18%の向上が見られる。一方で,生物科学については2%の向上にとどまっている。

3.4 出版団体および資料種別の電子化状況

6は,出版団体と資料種別による集計結果である。出版団体ごとに,電子化が進んでいる資料種別の傾向にかなりばらつきがあることがわかる。最も電子化の進んでいる政府機関においては,学術誌・学会誌,実用誌・解説誌が90%前後の電子化率を達成しているのに対し,研究報告・技術報告は68%にとどまっている。他方,公共機関,大学等教育機関,会社等営利団体においては,逆に研究報告・技術報告の電子化が最も進んでいるという結果であった。

表6 出版団体および資料種別の電子化状況
学術誌・学会誌 研究報告・技術報告 実用誌・解説誌 会議要旨集 会議論文集 その他 合計
政府機関
上3段:今回の調査
下3段:前回の調査
9 181 14 27 27 108 366
8 123 13 13 9 78 244
89% 68% 93% 48% 33% 72% 67%
10 215 14 31 24 118 412
7 117 10 11 5 79 229
70% 54% 71% 35% 21% 67% 56%
公共機関
上3段:今回の調査
下3段:前回の調査
21 554 16 20 19 402 1,032
7 348 5 6 5 254 625
33% 63% 31% 30% 26% 63% 61%
20 581 17 24 20 459 1,121
0 308 4 8 2 226 548
0% 53% 24% 33% 10% 49% 49%
大学等教育機関
上3段:今回の調査
下3段:前回の調査
45 1,603 10 32 25 87 1,802
26 1,012 6 7 7 47 1,105
58% 63% 60% 22% 28% 54% 61%
39 1,487 11 28 27 82 1,674
21 876 6 1 6 32 942
54% 59% 55% 4% 22% 39% 56%
学協会
上3段:今回の調査
下3段:前回の調査
2,080 213 297 1,324 515 132 4,561
1,244 100 96 294 134 41 1,909
60% 47% 32% 22% 26% 31% 42%
1,840 189 266 1,100 449 144 3,988
867 54 50 160 82 33 1,246
47% 29% 19% 15% 18% 23% 31%
会社等営利団体
上3段:今回の調査
下3段:前回の調査
19 239 114 2 17 34 425
6 148 47 0 1 20 222
32% 62% 41% 0% 6% 59% 52%
13 267 83 4 14 25 406
6 133 24 0 1 8 172
46% 50% 29% 0% 7% 32% 42%
商業出版社
上3段:今回の調査
下3段:前回の調査
181 9 424 2 18 59 693
123 3 180 0 3 17 326
68% 33% 42% 0% 17% 29% 47%
174 13 439 2 27 68 723
98 4 137 0 2 10 251
56% 31% 31% 0% 7% 15% 35%
その他
上3段:今回の調査
下3段:前回の調査
123 339 90 87 41 80 760
46 102 26 26 8 33 241
37% 30% 29% 30% 20% 41% 32%
111 333 87 117 53 73 774
37 63 13 18 14 25 170
33% 19% 15% 15% 26% 34% 22%
合計
上3段:今回の調査
下3段:前回の調査
2,478 3,138 965 1,494 662 902 9,639
1,460 1,836 373 346 167 490 4,672
59% 59% 39% 23% 25% 54% 48%
2,207 3,085 917 1,306 614 969 9,098
1,036 1,555 244 198 112 413 3,558
47% 50% 27% 15% 18% 43% 39%

*表内上段:JST国内収集誌数,中段:電子資料数,下段:電子化率(電子資料数/JST国内収集誌数)

また,学協会の学術誌・学協会誌は,47%から60%と13%向上している。学術誌・学会誌の電子化率が向上した要因としては,JSTが1999年から運用しているJ-STAGEにおける電子化の推進が考えられる。

なお,会議要旨集,会議論文集についてはどの出版団体でも電子化率が低く,これは前回調査と同様の傾向であった。

3.5 出版団体および資料分野別の電子化状況

7は,出版団体および資料分野別による集計結果である。

表7 出版団体および資料分野別の電子化状況

出版団体の観点から,最も電子化が進んでいる政府機関に着目すると,収集誌数が9と少なくはあるが,経営・情報システム工学の電子化率が100%となっているのは特筆すべきであろう。他には環境工学で83%となっている。公共機関においても,環境工学の分野で最も電子化が進んでおり,78%であった。一方,大学等教育機関では,機械工学が75%と最も進んでおり,環境工学は49%にとどまっている。このことから,政府機関および公共機関においては,環境工学に関する発信の必要性が高まっていることが推測される。

資料分野別の観点から電子化率が高い電気工学に注目すると,大学等教育機関における電子化率は40%から48%と8%の向上にとどまっているのに対し,学協会の電子化率は40%から59%へと19%もの向上が見られた。また,科学技術一般においては,公共機関において前回調査と比較して16%増と比較的大きな伸びが見られる以外は,全体的な底上げ傾向が見られる。

また,前回調査で電子化が進んでいるとされた大学等教育機関の農林水産分野においては,前回調査の70%から68%へと逆に低下していることがわかった。商業出版社の生物科学,医学分野においては,それぞれ53%から61%,41%から53%と順調に電子化が進んでいることが読み取れる。

3.6 JST国内収集誌のサービス提供元から見た電子化状況

本節では,JST国内収集誌の電子資料4,672誌の傾向について,調査1と調査2それぞれの結果に基づき,サービス提供元から見た電子化状況を報告する。

調査1で出版者サイトにおけるJST国内収集誌の提供状況を調査した結果,出版者サイトから提供される電子資料は計2,410誌(JST国内収集誌のうち25.0%,前回の調査では19.8%)であった。

次に,調査2の結果,JST国内収集誌のうちアグリゲータサービスに収録されている電子資料は,延べ2,693誌であった。表8は各サービスにおけるJST国内収集誌の提供数および延べ数(複数サービスで提供されている資料の重複分含む)である。

表8 (調査2)アグリゲータサービス別JST国内収集誌提供数
今回の調査 前回の調査
サービス名称 JST国内収集誌の提供数
AgriKnowledge*) 231 295
ELBIS 1 6
CiNii 1,031 1,012
Pier Online 23 8
メディカルオンライン 651 492
J-STAGE 756 505
延べ数 2,693 2,318

*)2012年1月にAGROLibがAgriKnowledgeに統合された。

4. 考察

今回の調査の結果では,JST国内収集誌で「電子資料の提供あり」と判定したものは,全体の5割程度になった。前述の通り,前回の調査に比べると,9%ほど向上している。一方で,前回の調査でも述べたように,2008年に行われた学術出版社協会(Association of Learned and Professional Society Publishers: ALPSP)の調査4)によれば,欧米を中心とした主要な出版社における科学技術系ジャーナルの電子化率は96.1%である。また中国の科学技術雑誌は2008年には6,082誌5)であり,電子化し流通している状況6)から見れば,中国における科学技術資料の電子化率は,100%に近いと予測される。これらと比較すれば,本調査の対象となる国内資料の電子化率は未だ低い状態である。

学協会の学術誌・学会誌に目を向けて見ると,前回の調査では47%であったが,今回の調査では60%になっている。これには,J-STAGEで提供している電子化資料が前回調査に比べて251誌増加していること,同様にメディカルオンラインについても159誌増加していることが学協会の学術誌・学会誌の電子化率向上に寄与している。今回の調査の対象ではない人文社会系等を加えれば,学協会の学術誌・学会誌の電子化率は62%7)になっている。

一方学協会の研究報告・技術報告の電子化率は47%であり,前回の29%と比べれば向上しているものの,会議要旨集,会議論文集の電子化率は22%,26%と,大変低い状態になっている。JSTと情報科学技術協会(INFOSTA)の調査8)によれば,企業の論文投稿の中心は,査読がない研究報告・技術報告や会議要旨集,会議論文集になっており,これらの電子化率が低いと,企業が発信する貴重な研究結果が十分に流通しない可能性がある。研究報告・技術報告や会議要旨集,会議論文集のような資料についても,学協会やJSTのような科学技術情報提供機関が協力し,産業における研究開発に貢献する可能性がある資料を中心に電子化を推進すべきと考えられる。

今回の調査では,テキストとして利用できないものの電子的に利用可能な資料は,「電子資料」と判断した。現在,J-STAGEがXML化した資料を提供しているように,標準的なフォーマットで広い利用ニーズに対応できる「電子資料」が求められている。

また科学技術資料を作成する際に裏づけとなる数値データ,画像データ,動画データなどの研究データを関連付け,提供する「電子資料」が求められる。第4期科学技術基本計画9)に記載された「知識インフラ」とは,そのような研究データを含み,さまざまな形態で利用できる「電子資料」と研究者データ等の科学技術情報や,ビジネス情報を組み合わせ利用できるプラットフォームであると考えられる。この「知識インフラ」に貢献できる資料が本来の「電子資料」であると思われる。

5. おわりに

本調査では,前回の調査2)に引き続き,国内学術逐次刊行物の電子化状況を調査するとともに,前回の調査との比較による考察を行った。

その結果,国内学術誌の電子化率は,前回の調査と比較して9%向上したものの,まだ48%ほどであり,欧米や中国等と比較して低い状態である。J-STAGEによる電子化促進や,学協会や民間企業などとの協力により,電子化を進めていくべきである。また,単に電子化を進めるだけでなく,電子化した資料を科学技術振興にどのように役立たせるのか,その利用をさらに考えていくべきであろう。

世界の研究者やファンディング機関が協力して,論文を含む研究成果のオープンアクセス化を進めている。ファンディング機関間の世界的な会合であるGlobal Research Councilでも,オープンアクセスの議論がされている。オープンアクセスの流れとともに,科学技術資料の電子化はますます進むと考えられ,日本においては電子化の推進,およびその利用促進が今後も課題になると考えられる。

参考文献
 
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