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リレーエッセー
つながれインフォプロ 第7回
齋藤 久実子
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2014 年 57 巻 1 号 p. 47-49

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毎月第3金曜日は神奈川県資料室研究会(以下,神資研=しんしけんと略す)の例会の日である。私は毎回「今日も楽しみ♪」とこの日を迎えている。「楽しみ」は「時代の半歩先を行く」例会の内容に啓発されることと,参加者のみなさんと顔を合わせられることの両方にある。

神資研は,「資料室の運営向上について連絡と研修等を行い,各資料室の充実と運営の活発化を図ることにより,企業及び公共機関等の進展に寄与し,あわせて神奈川県産業の振興に寄与することを目的」として,50年以上活発に活動を続けているローカルネットワークである。一方,神奈川県立川崎図書館(以下,川崎図書館と略す)は「科学と産業の情報ライブラリー」を愛称とする科学技術と産業に特化したユニークな県立の図書館である。

川崎図書館が神奈川県の2館目の県立図書館として開館したのが1958年,その3年後には「京浜地区資料室運営研究会」が始まり,さらに2年後に神資研へと名称変更して,半世紀以上ともに歩んできた。神資研の会長は川崎図書館の館長であり,事務局を川崎図書館が担当しているが,一方的な依存ではなく,相互に「なくてはならないもの」という関係を保っている。

「神奈川県科学技術政策大綱(http://www.pref.kanagawa.jp/uploaded/attachment/456530.pdf)」によれば,県内在住の研究者は約1.3万人で全国3位,技術者は約30万人で全国2位,研究所は約540か所で全国2位など,神奈川県には科学技術の原動力となる知的資源が集積している。こうした背景のもと,神資研会員数は,1963年に会則を整えて神資研となった時点で35機関,その後30年を経た1993年の162機関を最大として,ここ数年はおおよそ100機関前後(うち大学と公共機関がそれぞれ10機関程度,8割が企業)で推移している(詳細はWebサイト参照,正会員リスト,例会のおしらせ,年報の目次等も公開している。Webサイトはネットコモンズを利用し,「理事の部屋」で理事会資料を共有したり,掲示板で意見をやりとりしたり,と効率的な理事会運営に役立てている)。

図1 神資研Webサイト

神資研の活動の中心となるのは毎月の例会である。1961年7月13日の第1回以来コツコツと積み重ねて,2014年4月18日の例会が第609回となる。「神資研年報45号」は「神資研五十年の歩み」とする創立50周年記念号であるが,その中で,例会を一覧にして「50年間変わらないテーマ」と「時代を反映したテーマ」の2つの観点から振り返っている。「変わらない」のは資料室運営・担当者・広報・レファレンスなどであり,「時代を反映」のほうはドクメンテーション・UDC・カード目録・電子ジャーナル・サーチャー・図書室の機械化(自動化)などである。近年話題の電子ジャーナル・電子書籍であるが,神資研では1997年「電子ジャーナルの現状と展望」以来,かなり早い時期から何度か取り上げてきている。見学会は国立国会図書館をはじめ,企業・大学・専門の図書館や研究所など,多岐にわたる「話題の現場」を見に出かけている。

ここ数年の例会は,8月を夏休みとして年11回,うち3回は見学会,残り8回は講演会・グループディスカッション等を行っている。春の総会後の特別講演会と,秋にパシフィコ横浜で開催される「図書館総合展」でのフォーラムも含まれる。例会は理事会で企画立案し,各理事が運営にあたる。12月の例会のあとは場所を変えて「年末交流会」での乾杯で一年を締めくくる。

図2 第597回例会(2013年3月)の「本の修理(実演・実習つき)」

今からちょうど10年前の2004年4月川崎図書館は「科学技術系外国語雑誌デポジット・ライブラリー」を開設した。企業資料室等で保存スペースの問題から廃棄を余儀なくされている学術雑誌のバックナンバーを,川崎図書館の蔵書として受け入れ,整備・保存して,広く県民の調査研究に役立てようという試みである。これは全国にも例のない先駆的な共同保存の取り組みとなった。当時,雑誌の受入担当だった私は,神資研のデポジット検討委員会にオブザーバーとして参加し,「新しいことを始める」ワクワク感を共有した。その頃,企業資料室や研究所の統廃合・閉室等が相次ぎ,ギリギリのところで廃棄を免れた雑誌も多数あり,片付けをしている図書室に雑誌をもらい受けに出かけて,箱詰め・運搬も行った。書架も送料込みで大量に寄贈していただき,統合された県立高校の空き教室を活用して開設にこぎつけた。第1回の「情報プロフェッショナルシンポジウム」でその経緯を発表できたのも,私にとっては忘れられない思い出である。

図3 図書館総合展ブース(2013年10月29~31日)
図4 「著作権の最新動向と図書館への影響」 福井健策氏

2012年秋には「神奈川県緊急財政対策」として,県立図書館の貸出・閲覧廃止,川崎図書館の廃館の方針が出された。新聞に大きく取り上げられたその日のうちに神資研副会長から電話があり,早速,Webサイトの「理事の部屋」で諮り,神資研としてアンケート調査を実施することを決定した。神資研のWebサイトにも特設ページを作成してこの問題をアピールし,アンケート結果や要望書を県知事と県教育委員会委員長宛に提出している。その後,県は「貸出・閲覧は継続」「川崎図書館は企業活動の支援につながる機能に特化して,KSP(川崎市高津区のかながわサイエンスパーク)へ移転」という方針に転換したが,KSPの「独立ラボ仕様」に高額な賃貸料を払って入居するとなると,現状の3,500㎡の何割程度のスペースが確保できるのか未確定であり,現在の川崎図書館からどの程度の資料を持っていき,どういう形でサービスできるのか,いまだ検討途上である。川崎図書館のヘビーユーザーでもある神資研会員と手を携えて,よりよい図書館像を策定していきたい。

「企業支援の川崎図書館」と言われるようになったのは,神資研と互いに切磋琢磨し協力し合ってきた連携の賜物である。最新の「神資研年報47号」の特集テーマは「図書館がつなぐ『人・場所・知識』」だった。まさしく「つながる」ことにこそライブラリアンの本質が潜んでいるのではないだろうか。

執筆者略歴

齋藤 久実子(さいとう くみこ)

神奈川県立川崎図書館司書。神奈川県資料室研究会事務局担当理事。表千家流茶道教授。好きなことは歴史ある街並みを歩くこと。

 
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