本稿では,統計的音声合成技術および声質変換技術の医療・福祉応用に関し,最先端研究成果をわかりやすく紹介する。筋萎縮性側索硬化症(ALS)等により発声機能を失いつつある障がい者の声をコンピューターに模倣させ,障がい者本人の声で音声出力を行う音声合成技術や,電気式人工喉頭を利用した喉頭摘出者や構音障がい者の声を自然で聞き取りやすい音声へリアルタイムで変換する技術等,新たな研究が音声情報処理分野において近年積極的に行われ,音声の障がい者のQOL向上に貢献すると考えられる顕著な研究成果も存在する。喉頭摘出者およびALS患者によるケーススタディーを紹介した後,現在の研究課題についても概説する。