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リレーエッセー
つながれインフォプロ 第14回
今野 創祐中込 栞八木澤 ちひろ
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2014 年 57 巻 8 号 p. 584-587

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本稿は,これから紹介する勉強会の幹事のうち3名が執筆し,「ku-librariansとは」と「これからの勉強会」は今野,「ku-librariansに参加して」は中込,「ku-librariansの運営体制」は八木澤が担当した。

ku-librariansとは

ku-librariansとは,主に関西の大学図書館関係者を中心として活動している勉強会である。1999年に京都大学(以下,京大)の図書系職員によって立ち上げられ,今年(2014年)で15年目を迎えた。業務時間外の2時間程度を使い,ここ数年は京大附属図書館内にある共同研究室を主な会場とし,月1~2回の頻度で,2014年8月までに181回(他番外編20回)を開催した。本勉強会への参加は自由であり,基本的には,京大の図書系職員以外の方も参加できる。通常,事前の参加申請や連絡も必要なく,Webサイト,メーリングリスト,Twitterなどで公開された予定を見て,関心のある会のみ参加すればよい,というスタイルをとっている。各回の参加者は,この数年では,平均して20名程度である。

勉強会開催の日にちや曜日は特に定めておらず,発表者の都合に合わせる形で開催日を決定している。

勉強会の形式は特に決まっていないが,発表者が特定のテーマについて話し(その際,PowerPointを用いることもあれば,レジュメを配布して話すこともある),その後,発表内容に関する質疑応答やディスカッションを通じてそのテーマへの理解を深めることが多い(1)。また,休日に勉強会を開催し,他大学の図書館などを見学に行くこともある。

その他,勉強会の記録や概要は,Webサイト注1)および関連論文注2)をご覧いただきたい。

図1 勉強会風景

ku-librariansに参加して

まず参加者の視点から,ku-librariansに参加する利点を2点紹介したい。

1点目は「京大内外の図書館関係者とのつながり」を得ることができるという点である。具体的に述べると,同僚とのつながりと京大図書系職員以外とのつながりがある。まず,同僚とのつながりであるが,京大の図書館・室は全部で約50あり,図書系職員はそれぞれの図書館・室に分散配置される。大きな部局もあるが,一人職場や,一部屋に職員が数人ということも珍しくない。業務上,他の職員とのつながりはあるが,毎日顔を合わせるわけではない。勉強会には多くの若手職員が参加するため,実際に顔をつき合わせて,近況報告や,ちょっとした相談をすることができる絶好のチャンスとなっている。

次に,京大図書系職員以外とのつながりである。前述したが,ku-librariansは基本的には京大図書系職員に参加者を限定していない。また発表者も京大図書系職員だけでなく,他機関の職員,京大のリサーチ・アドミニストレーター(University Research Administrator,以下,URA),そして研究者等多くの分野の方に発表していただけるよう声を掛けている。そのため発表内容は図書館内の視点にとどまらず,非常に多様である。個人的な印象であるが,昨年度は勉強会を介して京大URAや京都の大学に所属する図書館学に興味のある学生団体の皆さんと特に強いつながりを得ることができた。昨今,図書館の研究支援機能や学習・教育支援機能が注目され,業務が図書館内だけで完結するのではなく大学教員や他部署,また学生との協働が求められている。このような状況にあって,同じく研究支援を担うURA,そして学習・教育支援の相手となる学生と勉強会で議論をし,懇親会で交流できたことは非常にプラスである。

2点目は「図書館業務全体への視点のひろがり」を得ることができるという点である。京大の図書系職員は多くの場合,業務が細分化されているため,図書館業務全体の中のある一部を担うことが多い。そのため,特に1年目は,一部の業務しかわからず,その業務が図書館業務全体の中でどこに位置づけられるのか,他にはどのような業務があるのか,ということを十分に理解できないまま仕事をすることになる。もちろんそれをフォローするための研修はあるが,それに加えて,勉強会に参加することで,図書館業務全体に対して,多岐にわたる視点から話を聞くことができる。

日常業務の中では,自分,もしくは自館のみの視点で物事を考えがちである。その思考を柔軟にするきっかけが勉強会にはある。たとえば,京大では組織改編が進められているが,とある1つの部局の例を勉強会で取り上げたことで,自らの部局ではどのように進めていけばよいのか,またどのようなあり方がよいのか等を考えるきっかけになった。ku-librariansに参加し,発表を聞き,参加者全員で議論をすることは,日々の業務改善や図書館業務の未来を考える種を得ることなのである。

ku-librariansの運営体制

次に,ku-librariansをどのように運営しているか,具体的に紹介する。

本稿執筆時点で,7名からなる幹事グループがku-librariansの運営を担当している。1999年の立ち上げ当初には1名だった幹事体制も,2005年以降は複数名に増加した。以後,幹事は入れ替わりを経つつ現在に至っている。

現在,企画は幹事全員が担当している。年に1,2回行われるミーティングで企画案を出し合う。そこで,おおむね半年から1年先まで「どの月に,どのような企画をするか,誰に発表依頼するか」という予定を立てる。また,回によって主担当者を決め,その担当者が発表者との連絡や,当日の司会といった中心的な役割を担う。企画以外は,メーリングリスト(広報),Webサイト(広報・記録),Twitter(広報・実況),懇親会といった役割ごとに主担当者と副担当者を固定している。主担当者が担当できない際は,副担当者が担当する。それぞれの役割の簡易マニュアルを,幹事全員で共有している。ku-librariansは有志による時間外活動であり,幹事も本務に支障が出ない範囲で運営する必要がある。なるべく幹事の負担が集中しない運営を模索するうちに,このような体制となった。

企画を行ううえで,いかに月に1度のペースを保つかということが一番の課題である。この15年間,毎月1回または2回というペースを崩すことなく開催している。しかし,企画案が出ず苦労することもある。それに備えて,「1月は新人企画」といった月ごとに固定したテーマも設け,予定を立てやすくしている。また幸いにも,先輩の幹事が築き上げてきた実績や人脈により,学内外から持ち込み企画が寄せられることも多い。ミーティングで立てた企画が,そのまま開催できるとは限らないので,企画案はストックも作っておくよう意識している。

幹事として,ku-librariansにかかわる利点は2つある。1つ目は,ふだんの業務では縁のない企画内容も勉強できることである。特に企画の主担当者になった場合は,発表者と内容を詰めていくこともあり,他の参加者よりも深くその内容を理解できるといえるだろう。2つ目は,イベント企画能力が磨けることである。「この規模のイベントをするには,準備期間の目安はこの程度」「イベントを開催するにあたり確認しておくべき事項」といったノウハウを身に付けることができる。これは勉強会だけでなく,実際の業務で,利用者向けの講習会・イベントを企画するときにも役に立つスキルである。

幹事は,毎月いかにタイムリーで魅力的な企画を提供できるか,という力量が問われ,力不足を痛感させられることも多い。しかし,参加者の間で有意義な議論ができたときや,勉強会で学んだことが実際の業務につながったときには,幹事として大きな醍醐味(だいごみ)を感じる。

これからの勉強会

現在,図書館を取り巻く環境は大きく変化し,ディスカバリーサービスやラーニング・コモンズなど,近年普及しつつあるサービスへの注目度が高まっている。これからの勉強会では,そうした話題となっているテーマに関する企画を,積極的に立てていきたい。一方で図書館史など,実務と直結しないテーマの企画も大切にしていきたい。なぜなら,長期的にみれば,実務で直面する問題の解決に役立つこともあるからである。

勉強会を運営していくにあたって,懸念していることは,幹事の体制である。本勉強会の幹事は京大の若手図書系職員を中心としているが,この数年,職員の新規採用が抑制され,今後,幹事の入れ替わりが困難となることが予想される。

また,図書系職員の総数も削減の傾向にあり,従来以上に各個人の業務量が増大する中で,本勉強会の運営を円滑に続行することが可能だろうか,という不安もある。

しかし,本勉強会には,これまで述べてきたように,参加者,運営者の双方に多大なメリットがある。今後もそうしたメリットは変わらないと思われる以上,できうる限りこの勉強会を継続していきたい。

執筆者略歴

  • 執筆者集合写真:左から八木澤ちひろ氏,中込栞氏,今野創祐氏

  • 今野 創祐(いまの そうすけ)

出版社勤務,中学・高校の教員(社会科・国語科)を経て,京都大学に図書系職員として採用された。文学研究科図書館を経て,現在は附属図書館宇治分館に勤務。慣れない理系資料と格闘中。

  • 中込 栞(なかごみ しおり)

大学卒業後,京都大学図書系職員に採用され,桂地区(工学研究科)総務課図書掛に配属。現在2年目。図書掛という図書室をもたない掛で,工学研究科の10の図書室にかかわる業務を行っている。

  • 八木澤 ちひろ(やぎさわ ちひろ)

京都大学人文科学研究所図書掛を経て,京都大学医学研究科教務・学生支援室図書掛(医学図書館)に勤務。大学時代に,母校の図書館で学生アシスタントとして活動。現在も学生協働に関心がある。

本文の注
注1)  ku-librarians:図書系職員勉強会 http://kulibrarians.g.hatena.ne.jp/

注2)  呑海沙織, 他. 自主的なキャリアアップの場としての勉強会:大学図書館員による勉強会ku-librariansの軌跡(〈特集〉図書館実践(サービス)の最前線 4). 図書館界. 63(6), 416-423, 2012-03-01 この論文は京都大学学術情報リポジトリKURENAIでも読むことができる。http://hdl.handle.net/2433/154298

 
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