科学技術振興機構(JST)では,1975年より科学技術用語を体系的に整理した辞書として,JST科学技術用語シソーラスを整備している。このたび,改訂したので報告する。
シソーラスは,科学技術の進歩とともに次々と新しい概念が生まれ,既存の概念の定義や表記が変わってしまうこともあり,使われなくなる概念も出てくるため,定期的に改訂する必要がある。今回は以下の方針に基づいて改訂を行った。
今回の改訂の概要は,以下のとおりである。
1) 新シソーラスの用語数37,349語(これまでは37,163語)
2) 改訂規模(採用した新語・修正語)・新語・昇格語 192語
・表記修正語 54語
・用語の統合 10語
・分割 1語
・降格語(削除)2語
3) 改訂内容新語・昇格語,表記修正語,統合・分割・降格語(削除),階層の充実の改訂内容を以下に示す。
・新語・昇格語の例(表1)
・表記修正語の例(表2)
・統合・分割(表3)
・降格語(削除)(表4)
概念が同じである2つのシソーラス用語,あるいは1つのシソーラス用語であるが複数の概念で使用されていたものについて,分割・統合を行った。
・階層の充実(表5)
JSTでは,シソーラスを骨格としてその同義関係や表記揺れも整理した,110万語の科学技術用語辞書をJSTシソーラスmapとして提供している。今回のシソーラス改訂内容は,このデータにも反映させた。また,JSTが作成する文献データベースを改訂後のシソーラスに基づいて検索できるように,過去の記事のキーワードの置き換えを行った。
今回のシソーラス改訂に伴い,2015年4月以降のJDreamサービス(科学技術文献速報およびSDIサービスを含む)の新着データには,新語や,これまでと表記の異なるシソーラス用語が索引されることになる。たとえば,“Tリンパ球”ではなく,“T細胞”が索引語として付与される(ただし,標題や著者抄録中の“Tリンパ球”が“T細胞”に置き換えられることはない)。そのため,SDI検索や過去の保存式を用いて検索を行う場合には,シソーラス改訂の影響を確認し,検索式中の語が改訂対象になって,式の修正を検討する必要がある。
また,以下の例のように,検索コード/CTを用いた検索(シソーラス用語のみに基づいた検索)に限らず,/ALや検索コードなしの場合もヒット件数が大きく変わる場合もあるので,改訂対象の索引語の置換やOR検索式への修正を推奨したい(この例では,検索式中の“Tリンパ球/CT”を“T細胞/CT”に置換したり,“Tリンパ球/AL”を“Tリンパ球/AL OR T細胞/AL”に修正したりすることを推奨する)。
L1 Tリンパ球/CT 219
L2 Tリンパ球/AL 227
L3 Tリンパ球 227
L4 T細胞/CT 0
L5 T細胞/AL 403
L6 T細胞 403
L7 Tリンパ球/CT 0
L8 Tリンパ球/AL 8
L9 Tリンパ球 8
L10 T細胞/CT 219
L11 T細胞/AL 427
L12 T細胞 427
今後,科学技術用語を整理した辞書は,これまでの用途に加え自然言語処理等での活用が期待されており,引き続き収録用語の充実を図っていくつもりである。その骨格をなすシソーラスについても,規模は小さくとも短いスパンでの改訂を進めていきたい。
今回のシソーラス改訂については,株式会社ジー・サーチの「シソーラス改訂のお知らせ」(http://jdream3.com/news/20150206.html)をご覧いただきたい。
(科学技術振興機構 知識基盤情報部)