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日本化薬における技術系社員向け情報調査教育 特許検索を中心に
西頭 光代
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2015 年 58 巻 3 号 p. 185-192

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著者抄録

日本化薬における知的財産関連教育は特許研修と情報調査研修からなり,「関連領域の先行技術調査を自ら行って,明細書を自ら作成できる研究者」を育成することを目標としている。新入社員教育から始まり,各年次目標に沿った研修プログラムを組み立て,知的財産部員が研修テキストの作成,講義,演習を実施している。その中で,技術系社員向けに行っている情報調査教育について,特に日本特許検索データベースの研修を例に,教育方法およびその具体的な内容を紹介する。特許検索が実際の研究業務にとって有用であることを実感できるように配慮するとともに,研修後にも実際の職場において各エンドユーザーが継続的に調査ツールを自然に活用できるような工夫をしている。たとえば,業務にかかわる演習を必ず行い,自らの興味に基づき試行錯誤した後に達成感を得られるような演習体験の機会を提供することが有効である。

1. はじめに

日本化薬株式会社(以下,当社)は,1916年に日本最初の産業用火薬メーカー「日本火薬製造株式会社」として誕生した。その後,帝国染料製造株式会社,山川製薬株式会社を吸収合併し,1945年に現在の社名である「日本化薬株式会社」となった。このような背景から,事業分野は機能化学品,医薬品,セイフティシステムズ(自動車安全部品),染料,触媒,農薬など多岐にわたっている。グローバルなニッチ市場をターゲットに,「世界的すきま発想。」をコーポレートスローガンに,研究開発型企業として当社のもつさまざまな基盤技術を融合し,世界が求める高い付加価値をつくることに取り組んでいる。従業員数は1,810名(単体),4,794名(連結)(2014年3月末)であり,特許の年間出願数は300件以上である。

当社の知的財産部は,4つの事業本部と並列する研究開発本部にあり,各分野の4研究所とともに1つの組織体を構成している。知的財産部には,主に特許出願・権利化関係を担当する特許グループと,筆者が属する情報グループがある。情報グループの業務は,研究所,事業本部および工場等から依頼された特許,各種文献,法規制の調査,分析,ならびに図書業務,社内の情報調査教育が主なものである1)2)

本稿では,技術系社員向けに行っている情報調査教育について,当社の知的財産教育の全体像や情報調査教育の歴史を交えながら紹介する。

2. 日本化薬における知的財産教育

研究開発型企業にとって,発明を生み出し,その権利を確保することはまさに生命線である。そのためには,各研究開発担当者が特許情報および技術情報を正しく把握し,進む研究方向性を明確につかめるような知的財産教育が重要と考え,次節のような取り組みを行っている。

2.1 技術系新入社員研修

4月に入社するとまず全新入社員は,高崎の研修センター「飛翔」で行われる人事部主催の集合研修に参加する。その中に知的財産部員が講師を務める講義も組み込まれており,全新入社員が特許制度,情報調査の初歩的内容を学ぶ。

その後,各事業所・研究所に配属された技術系社員は,配属先の業務に応じた各種の研修を受ける。そのうち知財情報研修については知的財産部が主催するが,たとえば,合成系,評価系,材料系の研究者は,研究所内で回覧している二次資料類の見方,論文・特許検索,化学物質検索,有機化学反応情報検索,法規制等の各種データベース(以下,DB)の使用法の研修を受ける。さらに所属する部署によっては,薬学・医学文献検索DB,海外特許DBの使用法などの研修も必要に応じて受講する。

その後技術系社員は,各地に配属になった後も数年間にわたり専門性の高い特許研修と情報調査研修を受講する。いずれも知的財産部員が講師を務める集合研修であり,その内容を次の2.2および2.3で述べる。

2.2 特許研修

特許に関する研修には,次の3つの研修がある。

「特許初級研修」では,研究開発活動と特許のかかわり,特許制度,明細書等について広く知識を身につけるために,特許グループ員が特許制度を中心に初歩的な解説をするとともに,発明が完成してから出願を依頼するまでの社内の手順や,それに伴い知的財産部に提出するための書類,たとえば「発明等届出書」についての解説などを半日掛けて行う。

「特許中級研修」においては,1日を掛けて日本特許制度の詳細な解説,外国特許制度の概要,特許出願から特許成立までの手続き,裁判制度を含めた特許権の行使と防衛の解説,さらに模擬裁判も行う。また,技術契約についての初歩的な研修も受ける。

「明細書作成コース」では,1日を掛けて特許グループ員が明細書を作成する時の注意点,発明の要点を漏れなく網羅するための手法,明細書案を点検する際の留意点につき講義した後,研究者の担当分野ごとに小グループに分かれて,特許グループの出願担当者が講師となってグループワークを行う。グループワークでは,明細書の記載要件に関する拒絶理由通知について当社実例や他社実例を用いて解説した後に,模擬的に明細書を作成し,グループディスカッションを行う。当社では,発明者が明細書案を作成し,大多数の出願は代理人を介さず当社の知的財産部が自製することを原則としているので,この一連の研修を通じて特許の理解を深め明細書作成のスキルを養う。

2.3 情報調査研修

情報調査研修は「情報調査初級研修」から始まり,主要国の特許制度と公報との関連について半日ほど学び,さらに半日掛けて日本特許検索DBの使用方法および調査の実習を行っている。

「パテントのマップ作成研修」では,日本化薬の全特許を対象に,ソフトの使い方に始まり,自由に解析を行いマップ作製できるところまで行う。また,図書関連の研修として図書室の利用ルールや電子ジャーナルの使用法,これに附随する著作権についても学ぶ機会を設けている。

これら特許研修と情報調査研修の一部は人事部との共催で,研究者のキャリア育成のステップとなっている。講師は知的財産部の特許グループ員と情報グループ員が担当し,部内の年間の研修計画を策定し,それに基づき入社年次別研修を数年掛けて行っている。

新入社員が体系的に初歩からの教育を受ける一方で,中堅以上の研究員や,本社,工場等からの異動者,キャリア採用者等を含めた全員を対象に,各種データベースの使い方,文献の入手方法等の講習会も定期的に開催している。新入社員向けの研修と大きく異なる点として,これまでの業務や各自の経歴等により習熟度がさまざまであるため,開催される講習会のレベルや内容に工夫が必要である。たとえば,日本特許のデータベースではバージョンアップ内容の紹介や便利な機能の紹介とともに,基本的な検索も操作の復習ができるようにさりげなく盛り込み,全員がそれぞれ理解度を深められるような配慮をしている。

3. 情報調査研修の目標

当社の知的財産部の方針として,技術系社員には「中堅研究者になるまでに,関連技術の先行技術調査を自分で行い,明細書を自分で作成できるようになる」という到達点を期待している。文言からはやや乱暴な目標にみえるが,実際はもちろん調査や明細書作成の支援をしており,すべて自力でやるようにと突き放しているわけではない。また,調査に関してどのデータベースを使用するかも含め,推奨や提案はするものの強制はせず,「自由に使用してください,自分でできたら便利です,不明点は遠慮なくお尋ねください,支援します,難しければ遠慮なく調査を依頼してください」という立ち位置である。自分でやるのも自由,依頼するのも自由,なのである。このような方法に至ったのは,これまで多くの試行錯誤を経た結果である。

当社が情報調査のツールとして特許情報検索サービスである「JP-NET」(以下,日本特許検索DB)を最初に導入したのは,2001年4月のことであった。当該システムで500万件の全文明細書検索サービスが開始されたのが2000年11月のことであるから3),サービス開始後半年と経ずしての導入であった。これより以前は,いわゆる「CD-ROMの時代」,さらに遡ると「マイクロフィルム」や「手めくり」の時代で,各研究所が独自にDBを選定し運用していたが,当時の担当者が全エンドユーザーによって検索できる統一システムの必要性を感じ,本DBの導入に踏み切った。当初は研究所と知的財産部で利用を開始し,さらに2004年2月に本社・工場等を含めた全社導入を行った。当時は極めて少ない人数で,インターネット経由でDBに接続する環境の整備から使用方法の説明会まで,全国の研究所や事業所に出向き行っていた。「エンドユーザーによる利用が一番重要」と考え,有効活用できるように教育研修に力を入れ,以来今日まで継続的に当社の情報グループ員がエンドユーザー向けの情報調査教育を行っている4)

4. 日本特許検索DBの研修の概要

日本化薬において技術系新入社員向けに行っている日本特許検索DBの研修について,具体的な教育の考え方と内容を紹介する。

集合研修として講義と実習を行う。会議室に参加者全員がインターネットが使用できる環境を準備し,研究者は職場からパソコンを持参し,最大で40名程度を同時に実施する。講師はベンダーの担当者ではなく,情報グループ員が担当し,テキストもまた情報グループ員が作成する。文字どおり,自前での手作りの講習である。

日本特許検索DBの講習も一度きりで終わりではなく,初級編,中級編に加え,パテントのマップ作成研修においても使用するなど,当該DBを使用する機会を随所に設けている。入社年度により若干開催時期は変更されるが,研修スケジュールを1に示す。

初めて使用する人を対象とした初級編は,入社して間もない6~9月ごろに実施する。「自分で簡単な検索ができるようになること」を目標として,実習つきで3時間程度を費やし,特許番号検索に始まり,キーワード,出願人,発明者等を組み込んだ検索式の立て方,PDFの取得,印刷,結果リストの作成まで,業務上で使用することを想定して一通り行う。興味ある特許のPDF取得,競合他社の気になる特許の審査状況一覧,実務で使用する資料作成を視野に入れた特許リスト(Excel,CSV)の作成方法など,2の目次に示したように,すべての機能の紹介を実習を交えながら行う。

初級編から3か月程度の後,秋から冬にかけて研修を行う中級編では,初級編の既受講者を対象に,「実際の業務に活用できること」を目標として講習を行う。これも実習つきで約3時間。初級編の講習以降一度も特許の検索をしていない人がいる可能性も念頭に置きながら(実際結構いる),ハイライト機能のように知っていると便利な機能の紹介も織り交ぜながら演習を重視して行う(詳細な内容については後述)。この集合研修の段階で,表示形式は見やすいイメージ表示,印刷形式は全文,多色使いのハイライトなど使いやすいと思われる形式の設定を全員で一斉に実行しておき,研究室に戻った後も同じ状態で再現できるように配慮をしている。

図1 技術系新入社員向け知的財産関連研修計画
図2 日本特許検索DB研修 初級編目次

5. 研修の受講者像

5.1 情報調査に後ろ向き? の部分

当社の情報調査研修における対象者は,主に技術系社員として入社し,各研究所,工場技術部等に配属された研究職と技術職である。学術論文にはなじみがあっても,それまで特許に接する機会は少なかったせいか,特許に慣れていないという人が多い。

彼らの心の声を少し誇張するなら,次のような声が聞こえてくる。

  • •   特許調査の研修を受けるよりも研究・実験に時間を掛けたい
  • •   文献類はよく読んでいるけど,特許はなじみがない
  • •   特許の記載の順序,書式がよくわからない(慣れが必要)
  • •   特許は見慣れない表現がたくさんで独特の日本語の言い回しだ
  • •   特許の請求項を読んでも何のことだかわからない(上位概念での表現,マルクーシュ構造)
  • •   同じ特許なのに何種類もの異なる番号が付いていて違いがわからない

いずれも心情としては理解できるものばかりであるが,情報調査教育をする側の立場としてはここで引き下がるわけにはいかない。「特許に費やす時間を短縮して実験する時間を増やしましょう,そのお手伝いをします」という形から提案をはじめ,まずは特許に慣れてもらい,最終的には企業研究における特許の重要性を理解するようになってもらわなければならない。

5.2 情報調査で強み! の部分

一方,なかなか特許に気持ちが向きにくい彼らも,情報調査においては大変多くの強みを有している。最近入社の若手の方(30歳くらいまでの方)はいわゆる「デジタルネイティブ世代」であり,日常的にGoogle等を使用しており,まったくといってよいほど情報検索に対して抵抗感をもたない世代である。また,多くの研究者は論理的思考の持ち主であり,加えて独創的発想の持ち主が多く,優秀な方が集まっている。自身の頭で考えることができて,工夫しながらさまざまな方法を試みる意欲もあれば,好奇心も旺盛である。「特許」と聞くと身構えてしまう「食わず嫌い」もあるが,いったんやればとても上手にできる人が多いのである。

5.3 調査ツールを活用してもらうために

研修においては,わかりやすく充実した内容の研修を行うことはもちろん大切ではあるが,それよりも重要なことは,研修後も継続的に調査ツールを有効に活用してもらうようにすることである。では,どうすればこのような人たちに活用してもらえるのか? 具体的な手法について考える。

研究者は一般に好奇心が旺盛なので,特許に興味をもったり,調査にメリットを感じたりすれば,実際はすぐ試してみるものである。従量課金制ではない年間契約であることを説明し,何度でもやり直しができる安心感,知りたいときにすぐできるといった時間的制約を受けない点,すきま時間にできる利便性,といったことで「まずは試してみてください」と促す。

次に特許の重要性について認識してもらう必要がある。そこで入社した研究員が自分の研究テーマについて理解し始めてきたころに研修を設定する。「ある日他社から自分が開発しているものとそっくり同じ内容の特許が出てきたらどうなると思いますか?」と問いかける。ここで,「その特許が公開段階なのか,成立した特許なのかによって,対応は異なり……」と考え始めるのは知財担当者の発想である。研究者は「せっかく研究開発したものが販売できなくなる」だけではなく「損害賠償を払わなくてはならなくなり,損害賠償の金額によっては,企業存続にかかわる」と気づき,それに対する危機感をもち,初めて特許の重要性を身近なものとして認識する。

そして,「そうなる前に,自分で出願しよう」となればよいが,それほど単純ではない。危機感,義務感,使命感だけでは特許に興味をもてるようにはならない。次は研究者自身が担当する研究でのメリットを示す。特許を読むと「同業他社の特許からは研究動向がわかる」「開発のヒントが詰まっている」「他社の使用している材料や評価法がわかる」などの特許情報と向き合うことで得られるメリットについて提案する。こうして初めて特許に自らかかわっていくようになる。

6. 研修の事前準備と当日の様子

6.1 テキスト作成

テキストの作成には力を入れている。研修後に忘れてしまっても,テキストさえ見れば自力でできるように,実際の検索画面をテキストに挿入している。研修のつど,最新の画面に差し替え,各画面の資料上に操作順序番号を入れ,「プルダウン」「選択」「クリック」「『戻る』ボタンで」と具体的指示を表記している。テキストどおりにやりさえすれば,誰がやっても同じことができることを心掛けている。たとえば,3は日ごろから当システムを使用している調査担当者であれば,すぐに検索対象・範囲を設定して検索画面に進むところだが,研修における最初の関門はこの「公報種別選択設定」の部分である。特許に不案内な受講者にとっては,特許と実用新案の区別がついていなかったり,公開と登録が理解できていなかったりで,検索対象を設定する際にどこにチェックを付けてよいか戸惑う。説明はするが,すぐには理解できないこともあり,「今回は特許のみの検索なので,実用新案にはチェックせず,特許だけ上から1個おきにチェックしてください」と指示する。「特開」「特願平」「特公昭」の文字にも受講者は困惑し,いざ検索入力しようとすると手がとまる。「特許嫌い」を作らないよう配慮が必要な部分である。ブール演算子,前方一致,そのほかの各種専門用語など,受講者にとって暗号のような情報検索界の常識にも慣れてもらう必要がある。

図3 日本特許検索DB研修 テキスト例1

6.2 研修での実習風景

研修では,疑問は放置せずその場ですぐ解決できるよう,講師のほかにバックアップメンバーが研修会場である会議室の後部に立ち,困っていそうな気配があればすぐに駆けつけるようにしている。質問が出た部分はその場で受講者全員で共有し,翌年のテキストにもポイントとして追加し反映させている。常に進捗を確認しながら落伍者を出さないよう,複数人の目で見守りながら研修を行っている。

毎年バージョンアップされる新機能についても研修では積極的に取り入れ,「ここが今回のバージョンアップによる新機能です」と明確に知らせる(4)。研究所の先輩が知らない新機能・便利な機能を知っていることで優越感を味わってもらい,「ぜひ,部署に戻ったら周囲の方にも教えてください,皆さんの株が上がります」と伝え,研究所全体の底上げ効果も狙っている。

図4 日本特許検索DB研修 テキスト例2

6.3 演習

初級編の研修は,実習を交えながらも講義が中心であるが,中級編では便利機能についての講義のほかは検索演習が中心で,さらにその演習結果を研究者が発表し,全員で意見交換する時間を設けている。

演習問題はオリジナルに作成し,受講者の研究分野の実際のテーマに即した具体的事例を盛り込む。十数問の演習問題を行う時間はおよそ1時間,その間バックアップメンバーと講師は個別の質問に対応するべく机間巡視を続ける。

演習問題の例を示す。5の2題はいずれも一見単純な番号検索問題であるが,「検索事例(2)」では,最終ページに共願人や発明者の続きがあるケースをあえて取り上げ,検索して目的の特許のファーストページにたどり着いて安心した受講者に,「最終ページに続く」の文字に気づいてもらい,最終ページにも共願人や発明者,権利移転などの情報が記載されていることを認識させる。そして,最終ページに一気にジャンプする表示機能があることも併せて覚えてもらう。「特許嫌い」にならない程度に小さなつまずきを体験し,画期的解決法(最終ページへのジャンプ)を示すことで,記憶の定着を図っている。

受講者がつまずきそうな点は,それを見越してあらかじめテキスト中に「ポイント」と称するヒントを入れている。演習問題にはつまずきやすいような「落とし穴」をたくさん準備しており,そこに気づいた賢明な受講者をほめて回る。たとえば,6の問題で発明者名の「さいとう」の5種類以上の漢字表記を,苦労して入力し検索した体験が,「キーワードによる検索」を学ぶ際に生きてくる。たとえば,「抗癌(がん)剤」では,受講者は「抗がん剤+抗ガン剤+抗癌剤+…」の表記揺れを含めて入力できるようになっている。「製剤」の検索であれば,「製剤」のほか,「錠剤+注射剤+軟膏(なんこう)+…」と得意分野の専門知識から,膨大な数のキーワードを含む検索式が出てくることもある。

技術用語の追加で件数が増える達成感を味わったところで,研修の最後のまとめとして,「行ったのはあくまで検索例であり,目的に応じて検索式は変化する」「場合に応じて自由に検索式を作ればよい」「検索に困ったらいつでも相談に乗る」ことなどを話す。そして「実際の調査では,その分野に精通した皆さん研究者の発想やキーワードの提案が頼りになります」と研究者にしかできない検索があることを伝えている。

研修終了後にアンケートを実施すると,5段階評価で5と4に相当する「大変満足」と「ほぼ満足」が100%近くを占めており,受講者の満足度は他の研修と比べても高いものとなっている。自由記入欄を見ると,テキストの詳細さ,演習つきであることが受講者の高評価につながっている。

図5 日本特許検索DB研修 演習問題例1
図6 日本特許検索DB研修 演習問題例2

7. おわりに

技術系社員向けに行っている当社の知的財産研修と情報調査研修,特に日本特許検索DBの研修の具体例について紹介した。情報検索の導入と教育の歴史についても簡単に触れたが,これまでの担当者たちが積み上げてきた研修システムを引き継いで実施しているものである。データベースの改良や特許法の改正等を踏まえ,状況に合わせて研修内容や方法は常に見直す必要がある。しかし,どんなときでも教育を受ける人たち,すなわち研究者の気持ちに寄り添い,希望を尊重することを忘れてはならない。いつの時代にも共通なことと時代に即した研修内容のバランスを取りながら,これからも研究者・技術者の実際の業務に役立ち,研究開発や事業の発展につなげるべく,よりよい研修を重ねたいと思う。

執筆者略歴

  • 西頭 光代(にしとう みつよ)

東京理科大学を卒業後,日本化薬株式会社・化学品研究所(現機能化学品研究所)に入社。樹脂組成物,記録材料,耐熱性樹脂等の研究開発に携わり,その後,研究開発本部知的財産部情報グループに異動。出願前調査から無効化資料調査,技術動向解析を担当し,さらに技術系社員の知的財産や情報調査等の教育に携わっている。

参考文献
 
© 2015 Japan Science and Technology Agency
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