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Vol. 58 (2015) No. 3 p. 224-227

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http://doi.org/10.1241/johokanri.58.224

集会報告

国際科学広報に関するワークショップ2015

  • 日程   2015年3月19日(木)~20日(金)
  • 場所   沖縄科学技術大学院大学(沖縄県国頭郡恩納村谷茶1919-1) OISTメインキャンパス会議室 B250
  • 主催   沖縄科学技術大学院大学(OIST)・科学技術広報研究会(JACST)
  • 協力   大学研究力強化ネットワーク(RUN)

国際科学広報に関するワークショップ2015が,沖縄科学技術大学院大学(Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University: OIST)と科学技術広報研究会(Japan Association of Communication for Science and Technology: JACST)が主催,大学研究力強化ネットワーク(Research University Network of Japan: RUN)が協力という形で,2015年3月19~20日に,沖縄科学技術大学院大学(沖縄県国頭郡恩納(おんな)村谷茶1919-1)OISTメインキャンパスにて開催された。当日は,全国の大学や研究機関から,広報を担当するURAなど100人余りが参加し熱心な議論を行った。

科学技術広報研究会

今回のワークショップは,そもそも,科学技術広報研究会での議論がもととなり開催に至った経緯がある。JACSTは,研究機関や大学などの広報担当者が,所属する組織の枠を超えて,広報活動における問題意識・問題点を共有し,それらを通して助け合い,ともに成長していくことを目指して2007年に設立されたネットワークであり,2014年の総会において,岡田小枝子(高エネルギー加速器研究機構)が会長,小泉周(自然科学研究機構/RUN)が事務局長として正式に就任,さらに,名取薫(沖縄科学技術大学院大学)が新たに設置された国際担当副会長となり,国際科学広報に関して,情報共有やワークショップなどの開催を進めていくこととなった。その一環として,今回のワークショップが開催されるに至った。

ワークショップの背景と目的

日本の大学・研究機関において,国際化は重要な課題となっている。今後,国際化を一層推進するためには,研究力向上を図るばかりでなく,広報情報発信力強化と連動した総合的な対策が必要となる。

実際,日本の大学や研究機関における研究水準は非常に高いものの,国際的に正当に評価されていないのではないかという疑問がある。研究成果が海外で正当に評価されるためには,世界的に認知された学術誌に論文が掲載されるだけではなく,現況では主に海外マスメディア等を介した科学コミュニティーや国際社会への訴求力が重要と考えられる。具体的には,論文の公開にタイミングを合わせた英文プレスリリースが大学の公式情報としてタイムリーに配信され,さらにそのプレスリリースに基づいて国内外の科学ジャーナリストによって速報記事や解説記事などが書かれ,社会に伝搬していくための体制を構築することが不可欠となっている。

こうした国際的な広報情報発信力強化を目的として,国内のいくつかの大学や研究機関等の広報担当部署においては,サイエンスライターなどの経験をもつ科学広報の専門家やインターンを採用し,最新の研究成果をわかりやすく魅力的な文章で即座に情報発信するための体制を整えつつある。しかし,研究成果を海外の科学ジャーナリストに幅広く取り上げてもらうためにはさまざまなノウハウが必要となり,これまではそれぞれの広報担当者が経験と勘に頼って情報発信の手法を確立してきた。

そこで今回の2日間のワークショップでは,海外の科学ジャーナリストやサイエンスライターを養成する高等教育機関の講師を招いて,国外ではどのように科学記事が作られて伝搬されるか,また,欧米ではどのようなサイエンスライティングのトレーニングが行われているかを紹介してもらった。また,それぞれの機関が経験してきた国際情報発信のノウハウとコストを共有し,費用対効果や効率的な人材育成と配置などについても模索することで,大学や研究機関における国際情報発信の在り方について議論した。

国際科学広報に関する海外の視点

ワークショップのはじめに,海外からの視点で,国際科学広報を取り巻く状況について,3名の方に講演していただいた。

沖縄科学技術大学院大学のニール・コルダー副学長(広報担当)は,インターネット,特に日に約8億9,000万人が利用しているとされるFacebookなどのソーシャルメディアの普及によって,国境を越え,また,時間の制約もなく,世界中に科学記事が伝搬していく時代になっていることを強調,科学記事を英語でタイムリーに配信していくこと,また,海外に出て行き,直接ジャーナリストに訴求することの重要性を語った。

国際科学雑誌である英国の『ニューサイエンティスト』のエディトリアル・コンテンツディレクターであるヴァレリー・ジェイミーソンは,海外の科学記者と直接やり取りする必要性を強調し,英文プレスリリースを作り届けるだけではなく,国際的な科学記者との直接的なコミュニケーションをより活用してほしいと訴えた。

また,米国カリフォルニア大学サンタクルーズ校でサイエンスコミュニケーション・プログラムの講師であるロバート・イリオンは,サイエンスライティングに関して国際的な需要がますます高まっており,プレスリリースに頼らず科学論文をじかに読みこなしライティングができる専門家の養成が,米国においても重要となっている現況を紹介した。

日本の大学や研究機関を取り巻く状況と国際科学広報の目的

では,日本の大学や研究機関を取り巻く状況はいったいどうなっているのか? 「国際科学広報の目的~なぜ国際科学広報をするのか」のセッションにおいて,小泉周特任教授の司会のもと,ユアン・マッカイ特任研究員(東京大学),三代川典史シニアURA(広島大学),倉田智子特任助教(自然科学研究機構基礎生物学研究所),岡田小枝子広報室長が,それぞれの大学・研究機関における取り組み事例を紹介した。また,パネルディスカッションを行い,会場からも活発な意見を得た。

こうした議論をもとに,以下のまとめを作成した。それぞれの大学・研究機関に持ち帰り,国際広報戦略についてさらなる検討を行うとともに,今後も情報共有を行っていくことを確認した。

セッションにおける議論のまとめ 「日本の大学や研究機関における国際科学広報の目的とは?」

日本の大学や研究機関にとって,国際化は喫緊の課題となっているが,日本の大学や研究機関の国際的な知名度は,実際の研究力等に比して,決して高くない。

正当な評価を受けるためにも,まず,大学や研究機関の国際的なブランドイメージの確立,それに伴う知名度および評判(Reputation)の向上は重要である。それによって,国際的な研究者や大学生・大学院生などの人材確保,国際共同研究の推進などさまざまな面での進展が期待できる。また,海外の現地での認知度の向上は,フィールド調査などを伴う国際共同研究や大型プロジェクト推進にとって,大きな後押しとなる。

さらに,研究者の研究活動の評価にとっても,いまや既存のメディアをしのぐ視聴者数のあるソーシャルメディア等を用いた国際的な情報発信は,Altmetricsを用いた研究評価などに寄与する可能性も無視できない。

このように,大学や研究機関における国際科学広報は,組織にとっても研究者個人にとっても,その活動を国際的に広め,研究力を高め,正当な評価を受ける重要な手段であるといえる。

そのためにも,大学や研究機関においては,それぞれの経営指針に照らした広報目標,対象,手法の設定について,今後のさらなる検討が必要である。

実践講座および事例紹介のワークショップ

2日目には,具体的で実践的なノウハウや取り組みについてのワークショップや情報共有が行われた。

京都大学学術研究支援室(Kyoto University Research Administration office: KURA)シニアURAの今羽右左デイヴィッド甫より,英文プレスリリースのスタイルと書き方についての実践講座が開催され,効果的な英文プレスリリース作成について踏み込んだ議論が行われた。また,国際的なプレスリリースのプラットフォームであるEurekAlert!(米国),AlphaGalileo(欧州),ResearchSEA(アジア)を使った発信と評価について,国立天文台天文情報センター広報室長の平松正顕,理化学研究所の大須賀壮およびジェンズ・ウィルキンソン,さらに,OISTメディアセクションリーダーの名取薫から事例紹介があった。また,科学記者の側からの視点として『サイエンス』誌日本・アジア特派員のデニス・ノーマイルから事例紹介があった。

海外でのイベント開催など直接的なプロモーションに関して,「直接的な国際広報の手法~理化学研究所における実践例から~」と題し,KEK(高エネルギー加速器研究機構)広報室長である岡田小枝子から,米国科学振興協会(AAAS)やユーロサイエンス・オープンフォーラム(ESOF)の年次会合でのブース出展などについて,これまでの事例紹介があった。

提言

こうした2日間の議論を経て,参加者は,今後も継続的な議論と情報共有,スキルアップのためのワークショップが必要であることを認識した。今後の行動計画ともなる以下の提言を取りまとめ,閉会した。

国際科学広報に関するワークショップ2015 提言
(序文)
本ワークショップの参加者は国際科学広報の重要性を認識し,下記の目標,戦略,提言に合意する。

(目的)
日本がその真価にふさわしい国際的な認知を受けることによって優秀な人材を獲得し,卓越した研究環境を維持できるよう,研究成果の発信力を強化させる。

(戦略)
上記目的を達成するため,日本の大学・研究機関の広報担当者は戦略的に恊働する。

(提言)
1. 実行計画
・進捗を確認するための会合を年2回開催するともに,上記目的を達成するための計画を立案する。
・実績のある国内外の有識者をこれらの会合に招聘(しょうへい)する。
・効果的なプレスリリースの書き方を含め,実践的なサイエンスコミュニケーションに関するサマースクールを開催する。
・国内のその他の科学コミュニケーションの団体などと情報を共有し,恊働する。
2. 長期目標
・各大学・研究機関の執行部が国際科学広報の重要性を認識し,専門的技能の訓練を受けた科学広報担当者を配置することを奨励する。
・大学が国際科学広報について学ぶ教育プログラムを開催することを奨励する。
・英語で科学記事を書くサイエンスライターを養成する専門的なトレーニングについて精査する。
・全ての大学がクオリティの高い科学記事を英語で公開するための最適手法について精査する。

まとめ

日本国内の大学・研究機関において,国際科学広報に従事するほとんどの方が,このワークショップに参加していたといっても過言ではない。非常に充実した議論が展開され,「(日本の大学や研究機関が)自ら変わらなければいけない」ことを自覚した2日間であった。

このワークショップを機会に,日本からの国際科学広報が,質・量ともに大きく飛躍するきっかけになると期待している。

(高エネルギー加速器研究機構 岡田小枝子,沖縄科学技術大学院大学 名取 薫,自然科学研究機構 小泉 周)


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