本号が発行される2016年4月1日,新聞の1面にはどのような見出しが掲載されているでしょうか。「障害者差別解消法」「合理的配慮」の文字が掲載されていてほしいと思います。「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」(2013年6月25日制定)が施行される日だからです。
この法律の背景には,障害を「人間であれば誰もが取り得る自然な状態のひとつである」とする理解があります。従来の「障害は個人の内部に存在する治療すべき要因」とする考え方(医学モデル)から,「障害は障害者ではなく,社会が作り出している」という考え(社会モデル)への移行という意味で画期的です。
弊誌は2015年(vol. 58, no. 4)の「『合理的配慮』の基盤としての情報のアクセシビリティ」で情報保障の観点から合理的配慮について取り上げました。2016年(vol. 58, no. 12)の「身体を拡張する筋電義手」は,情報技術の進歩が障害の概念を変えることに言及しています。2015年(vol. 57, no. 12)には「音声の障がい者のための最先端音声合成技術」を掲載しました。障害の有無を超えて誰もが人間として生きやすい社会となるために,情報科学技術が何を可能にしたか,今後もお伝えしたいと思います。
本号は,弊機構理事の白木澤による巻頭言「オープンサイエンスへの取り組みと『情報管理』」に始まり,オープンエデュケーション,研究者識別子ORCID,DOIと,オープン化に関連した記事を多数掲載しました。このオープン化はオープンにすること自体を目的とするのではなく,情報・データの共有によって研究のさらなる発展やイノベーションにつながることを目指すものです。
本号から,目次,標題ページの体裁を変更しました。いかがでしょうか。創刊号からの全記事が読める開かれた雑誌として,さらに皆さまの役に立つことができますように。本年度もご愛読のほど,どうぞよろしくお願いいたします。(KM)