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情報界のトピックス
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2017 年 59 巻 11 号 p. 795-796

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新しいジャーナル評価指標「CiteScore」

エルゼビアは12月8日,ジャーナルの新しい評価指標群「CiteScore」を発表した。CiteScoreは,抄録・引用文献データベース「Scopus」に収録されている330分野2万2,200誌以上のジャーナルの引用インパクトの全体像を示す指標。年間のCiteScore値,その値の月間値であるCiteScore Tracker,CiteScore Rankなど7つの指標からなっており,単一の指標だけを使うよりもジャーナルの品質をよりバランスよく評価できるとしている。たとえば2015年のCiteScoreは,その前の3年間(2012~2014年)に出版された文献が2015年に引用された回数を,同じ3年間に出版されScopusに収録されている文献数で割って計算する。Web of Scienceの収録誌データから算出している「インパクトファクター」に比べると対象誌は2倍で,論文だけでなく,レビューやレターなどあらゆるドキュメントが計算に含まれる。またCiteScore値の算出根拠となったデータを確認できるようにするなど,透明性を高めている。CiteScoreは,ScopusのJournal Metricsサイトなどで,無料で公開されている。

英仏独の国立アカデミー,よりよい科学出版に関する声明を発表

英国王立協会,フランス科学アカデミー,ドイツ国立学術アカデミーレオポルディーナは12月13日,よりよい科学出版の原則についての共同声明を発表した。科学論文やジャーナルの数が増え続ける中で,既存や新興のジャーナルがピアレビューをめぐるベストプラクティスに従うことにより,科学的記録の完全性を守ることが不可欠だとしている。声明では基本的原則として,(1)効率的で質の高い科学情報流通,(2)利益相反の回避,(3)利益相反がなく,しっかりした科学的基準に基づいた公正な論文審査の実施,(4)実績ある科学者の管理下での論文選定と編集作業の実施,の4つを挙げている。そのうえで,審査や意思決定プロセス,レビュアーの満たすべき要件,オープンアーカイブやオープンアクセスの原則などについてアドバイスをしている。

研究成果へのアクセス拡大を目指すパートナーシップORFGを設立

米国の大手研究助成団体8機関は12月15日,研究成果へのアクセス拡大を目指すパートナーシップ「Open Research Funders Group」(ORFG)の設立を発表した。設立に加わったのは,アルフレッド・P. スローン財団,米国心臓協会,ビル&メリンダ・ゲイツ財団,オープンソサエティー財団,ロバート・ウッド・ジョンソン財団などで,8機関の年間助成金額は合計50億ドル近くになる。ORFGでは,研究助成機関が,研究成果やデータへのアクセスを促進するために利用できる実際的な公開原則の策定を目指して,定期的に協議するとしている。また,情報資源やベストプラクティスの収集・管理,世界全体でのオープン性拡大に必要な基盤の構築・支援を行う。プロジェクトの調整役としてSPARC(Scholarly Publishing and Academic Resources Coalition)が取り組みに協力する予定。

NIIとNICT,世界最速の長距離データ転送に成功

国立情報学研究所(NII)と情報通信研究機構(NICT)は12月6日,日本-米国間で「世界最速」の長距離データ転送に成功したと発表した。11月に米国から日本に向けて行われたデータ転送実験では,NIIが開発したファイル転送プロトコル「MMCFTP」で転送速度約150Gbpsで1~10テラバイト(TB)のデータを安定的に転送することに成功。1TB(地上波デジタル放送約120時間分)を1分未満で転送したことになる。従来報告されていた長距離転送記録は80Gbpsであり,今回の実験結果はこれまでの記録を距離条件・転送速度ともに大幅に上回るとしている。MMCFTPは,素粒子物理学,核融合学,天文学などの先端科学技術分野において,巨大実験装置から得られる大量の実験データを長距離転送するために開発された。ネットワークの状況(遅延の大きさやパケットロス率)に応じてTCPコネクション数を動的に調整することで,安定した超高速データ転送を実現している。

AIと人間の感情共有についての実証研究実施へ

日本マイクロソフト,エム・データ,大阪大学は12月12日,人工知能(AI)と人間の感情共有について実証する産学連携共同研究を実施すると発表した。人工知能に求められる社会的な役割が,人工知能自らが主体的に人間にかかわり,アシストする形へと変化する中,相手の感情を読み取り感情を共有することは必須の技術になるとしている。そこで,日本マイクロソフトの女子高生AI「りんな」に,エム・データの「TVメタデータ」を活用した新機能を実装してユーザーに提供し,その反応を分析する。「TVメタデータ」はエム・データがテレビ放送の放送実績を独自にテキスト化したデータベースで,番組データやCMデータのほか,番組内で紹介された商品,レストラン,ホテルなどのデータが含まれている。「りんな」にこうしたデータを取り込むことにより,ユーザーと「りんな」がテレビ番組やCMに関する雑談を楽しめる新機能を提供する。「りんな」とユーザーのやりとりやユーザーの感情は,大阪大学が中心となって分析を行い,その成果は「りんな」の会話能力に随時反映される。

SPレコード保存のためのクラウドファンディング開始

東京藝術大学附属図書館は12月13日,同図書館に寄贈されたクラシックのSPレコード2万枚を保存するプロジェクトのためのクラウドファンディングを開始した。SPレコードは19世紀末に考案されて広く普及した形式だが,1950年代にLPレコードが普及すると使われなくなった。2万枚のSPレコードは,2013年に死去したSPレコード研究家クリストファ・N. 野澤氏が遺(のこ)したコレクションで,「未来の音楽家のために役立ててほしい」という故人の遺志により蓄音機とともに寄贈されていた。クラシックのコレクションとしては国内最大級の規模で,世界に数枚しかない貴重なレコードも含まれている。寄贈された2万枚のうち1割程度が専用保存箱に入って利用可能な状態にあるが,資金難の影響を受け,残りは段ボールに入ったまま図書館内や大学の地下倉庫に保管されている。LPレコードは縦置き保存ができるのに対して,重くて割れやすく,反りやすいSPレコードは,横置きに十数枚ずつ積んで保存する必要がある。同図書館では,2017~2018年の施設改修にあわせて保管する場所のめどが立ったため,積み重ね可能な強度をもつ保存箱にSPレコードを移し,演奏の研究や蓄音機コンサートに使用できる状態にすることを目指している。クラウドファンディングの寄付額は3,000円からで,目標額は500万円。寄付額によっては,蓄音機コンサートへの招待などが受けられる。

 
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