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集会報告
集会報告 日中韓国際シンポジウム:The Landscape of Scholarly Publishing in China, Korea & Japan
藤井 昭子
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60 巻 (2017) 12 号 p. 902-905

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開催情報

  • 日程   2017年11月24日(金)
  • 場所   テレコムセンタービル(東京都江東区)
  • 主催   科学技術振興機構(JST)

1. はじめに

毎年科学技術振興機構(JST)が科学と社会との対話・協働促進の場の提供のために主催するサイエンスアゴラにおいて,この度「日中韓国際シンポジウム:The Landscape of Scholarly Publishing in China, Korea & Japan」注1)が開催された。JST,中国科学技術信息研究所(Institute of Scientific and Technical Information of China: ISTIC),韓国科学技術情報研究院(Korea Institute of Science and Technology Information: KISTI)の3機関の発表者により,公的機関の観点から日中韓各国の学術出版,特に電子ジャーナルの現状,各機関の役割や取り組み,今後の展望について報告が行われた。以下に概要をご紹介したい。

2. 発表の内容

2.1 シンポジウムの趣意(モデレーター:JST,小賀坂康志氏)

科学技術情報流通における学術出版のランドスケープは,組織や国家の研究成果ならびに競争力を示す指標である。学術出版の大半は国際大手出版社の手にあるが,各国・地域の学術出版機関に寄せられる期待も大きい。本シンポジウムでアジアの隣国同士が学術出版のランドスケープや実践を共有し,各ステークホルダーにとって今後の方向を検討する一助となるよう願う。

2.2 Current Development of Chinese Sci-tech Journals(ISTIC,Dong, Cheng氏)

(1) 中国科学技術誌の現状とISTICの活動

2015年において中国の全学術誌1万14誌中4,983誌(49.76%)が科学技術誌であり,ISTICの論文引用データベースによればこの10年間でコアとなる科学技術誌の被引用頻度14%,インパクトファクター(IF)15.4%の上昇など成長が続く。ISTICは1999年から学術誌評価のフレームワークComprehensive Evaluation Index System of Chinese Sci-tech Journalsを運用し,品質,国際競争力,持続的成長可能性の3指標レベルを基に定量定性双方の評価に注力している。China Journal Citation Reports(年刊)も発行している。

(2) 中国の英文科学技術雑誌とその国際的パフォーマンス

2016年6月における中国の英文科学技術誌は307誌(中国科学技術誌の6.2%)である。ISTICでは2000年にChina Sci-tech Journal Database(英語版)を立ち上げた。2001年から英語版でもChina Journal Citation Reports(隔年刊)を発行し,国際的な情報サービス・大手出版社に情報提供を行っている。中国科学技術誌の国際的影響力は増大し,たとえばScience Citation Index(SCI),Engineering Index(Ei)への中国誌の収録は,1987~2015年に11誌から148誌,20誌から216誌にそれぞれ増加した。英文論文の割合が急速に増加し,中国語論文より高い質を示し国際的影響も高まっている。

(3) イノベーション国家建設における中国学術誌の課題

中国科学技術部は科学技術発展の傾向や水準を多角的に検討して科学技術管理政策を打ち出し,論文評価も量から質・影響力に移行している。中国学術誌数は世界全体の7.85%のシェアを占め米英に続く。ISTICは2016年から傑出した論文を選んでOutstanding Chinese Sci-tech Paper Output Reportを出版している。ISTICが毎年5,000の優れた論文を選出するTop Runner 5000作成に必要な評価ツール,学術情報流通,先端領域モニタリングのために,国際大手出版社やJSTのような海外情報機関からの協力も仰ぎたい。

図1 発表の様子(Dong氏)

2.3 The Landscape of Scholarly Publishing in Korea(KISTI,Kim, Jeonghwan氏)

(1) 韓国学術出版の概況

韓国の国家研究開発予算,研究者数,学術誌数,学術論文数ともに近年では毎年増加傾向を示し,SCI収録の韓国論文数は2015年には5万7,626論文で世界全体の2.77%である。主要学協会は,学術誌の国際的な顕在化や高被引用を目指すため出版費用を支払い国際大手出版社に依存している。

(2) KISTIの提供する学術出版プラットフォーム

KISTIでは学術論文出版の各プロセスを支援するさまざまなサービスを提供している。具体的には,(i)査読や原稿管理を含むオンライン投稿審査システムACOMS,(ii)韓国初の科学技術分野の学協会向けポータルS&T Society Village,(iii)総合学術出版プラットフォームKPubS,(iv)国際情報流通,長期保存のためのXML変換のJATS XML Generator,(v)科学技術誌の英語版プラットフォームKorea Scienceなどである。Korean Federation of Science and Technology Societiesに2017年現在登録されているのは639学協会の743誌で,おのおのの利用数は,ACOMS 144誌,以下は累積でKPubS 470誌,S&T Society Village 921誌,Korea Science 465誌,Korea DOI Center 331誌となっている。

(3) 学術出版プラットフォームの課題

現在の主な取り組みは(i)各プロセスの標準化と相互連携(インターフェース,マニュアル,モニタリング(統計情報提供)機能の改善),(ii)DOI(Digital Object Identifier)の発行と登録(KPubSで発行される論文および補助資料へのKorea DOI CenterによるDOI登録),(iii)XML変換(半自動でのxmlドキュメント生成),(iv)補助データの出版(ガイドラインやメタデータスキーマの作成,DOI付与),(v)研究不正防止(剽窃(ひょうせつ)チェックシステムの利用促進と新システムの検討)などである。さらにKPubSは各プロセスを統合した総合学術出版プラットフォームとして,フルサイクルの出版サービス(作成,アーカイビング,Webサービス,流通)を目指している。特にアーカイビングの問題点は,公的研究助成機関の資金提供を受けた論文の著作権やライセンスの海外出版社への移転により国内でアーカイブされないため,研究者がオープンアクセス(OA)誌の益に供していないことである。

(4) 今後の展望

図書館コンソーシアム,国内外の情報機関,機関リポジトリなど多様なレベルで学術出版のOA推進の活動が行われているが,成功の鍵となる政府によるOA政策,法整備が緊急の課題である。OAに関わるすべてのステークホルダー,つまり国内はもとよりISTICやJSTなどの海外機関との協働を図りたい。

図2 発表の様子(Kim氏)

2.4 Scholarly Publishing in Japan : Current Status and Future Plan of J-STAGE(JST, 小賀坂康志氏)

(1) 日本の学術誌のランドスケープ

日本の学術誌の大半は学協会の発行による。2017年3月現在2,715誌中約半数(1,263誌)が電子ジャーナルで,そのうち998誌がJ-STAGEを利用し,商業出版社によるものは106誌である。国際競争力に関しては,たとえば2017年JCRのIF付きの1万1,459誌中,日本の学術誌は242誌で,うち122誌がJ-STAGEに登載されている。国内でも文部科学省のOA政策をはじめ,OA誌育成の推進に努める一方,国際的にはOA誌の品質が問題になってきている。

(2) J-STAGEの現状

1999年にサービスを開始したJ-STAGEは,国内学協会等が発行する学術論文誌の国内最大級の電子ジャーナルプラットフォームである。科学技術分野はもとより,人文・社会科学分野の国内外での学術出版流通の促進,OAの推進,学協会への出版支援サービスの提供を目的とする。2017年10月現在,2,411誌,400万3,078記事を登載し,約9割が無料で全文閲覧可能である。登載記事のダウンロード数は増加傾向にあり,うち約3割が海外からである。2003年(J-STAGE2),2012年(J-STAGE3)に大幅なバージョンアップを行い,2015年には査読論文以外の会議論文等,登載する資料種類の拡大を行った。

(3) J-STAGEの取り組みと今後

J-STAGEでは自国の研究成果の国際発信力強化とOA推奨に向けて,新機能の開発やプロジェクトに取り組んでいる1)。新機能の開発としては,全面的に刷新したユーザーインターフェースが,現在の評価版に対するユーザーからの要望を反映して,2017年近日正式稼働の予定である注2)。新しいインターフェースは国際的なプラットフォームデザインをもち,ジャーナルの目的や特徴を明示する詳細情報掲載,モバイル機器による容易なアクセス機能などを備える。オープンサイエンス推進に関連するプロジェクトとしては,J-STAGE登載誌のOA化のためのノウハウを発行機関に提供する「オープンアクセスガイド」の作成,ジャーナル出版のベストプラクティスを可能にする専門コンサルテーションの英文誌パイロットプロジェクト,データジャーナルやデータリポジトリの支援などが挙げられる。

図3 発表の様子(小賀坂氏)

3. おわりに

各発表後のフロアとの質疑応答では,各国・地域の学術出版の状況,論文評価の方法から,J-STAGE利用のメリット,データ出版に至る幅広い内容が討議され,本シンポジウムに寄せる参加者の関心の高さがうかがわれた。

隣国でありながら,今回のように中国や韓国の公的情報機関の取り組みについて知見が得られる機会は少ない。オープンサイエンスへの動きの中で,公的機関ならではの学術情報流通促進に果たせる役割も大きい。今後もこのような貴重なシンポジウムの場を設けていただければ幸いである。

(藤井昭子)

本文の注
注1)  日中韓国際シンポジウム(The Landscape of Scholarly Publishing in China, Korea & Japan):http://www.jst.go.jp/csc/scienceagora/reports/2017/program/booth/152/

注2)  2017年11月25日に正式稼働した。

参考資料

  1. a)   特集 地域の研究成果を可視化する : 各国データベースと評価. アジ研ワールド・トレンド. 2017, no. 259, p. 4-43.

参考文献
 
© 2018 Japan Science and Technology Agency
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