岡山医学会雑誌
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浮遊培養によるニワトリ胚網膜色素上皮細胞からの水晶体様構造の形成
筒井 康子
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1997 年 109 巻 1-2 号 p. 15-24

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抄録

塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor,以下bFGF)の存在下でニワトリ胚の網膜色素上皮細胞を浮遊培養して,その形態変化を観察した.孵化後7.5日胚の網膜色素上皮にトリプシン処理を施して細胞単位の懸濁液にしたものと,トリプシン処理を施さずピペッティングのみで細かくした網膜色素上皮小片とを,高濃度(10および200ng/ml)のbFGF存在下で培養すると小片は塊状になって増殖しタマネギ様の球形重層構造を形成したが,懸濁液にしたものはタマネギ様構造を形成しなかった.このタマネギ様構造の形成はbFGFの濃度に依存して形成され, bFGFの濃度が1ng/ml以下では形成されなかった.また,この部分は,免疫組織化学法にて抗クリスタリン抗体および抗bFGF受容体抗体に陽性であった.以上から,ニワトリ胚網膜色素上皮細胞から水晶体上皮細胞への分化転換には,網膜色素上皮細胞どうしの相互作用および一定濃度以上のbFGFの存在という2つの条件が揃うことが必要である.

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