抄録
近年,日本のものづくり企業を巡る環境は目まぐるしく変化している.IoT,Industry 4.0,AI,ビッグデータなど新しいコンセプトと技術が次々と登場し,その対応に追われている.とくに,IoTをはじめとする近年のITシステムは従来の設計情報の流れの両軸であるエンジニアリングチェーンとサプライチェーンに直接的に影響を与えている.本研究の目的は,ITシステムがエンジニアリングチェーンとサプライチェーンを統合したバリューチェーンにどのような影響を与えるかについてその実態を分析することであり,日本国内にある4工場を対象として,「ものと情報の流れ図」に沿って各社のITシステムの活用状況の比較事例分析を行った.本稿の意義は,ITシステム分析に「ものと情報の流れ図」のフレームワークを用いることを提案し,企業のバリューチェーンにおけるITの活用の実態を詳細に明らかにしたことである.