抄録
本論文では,半導体部品を使用するセットメーカーと半導体製造業者間のキャパシティ(生産能力)予約契約を考察する.キャパシティ予約契約とは,セットメーカーがキャパシティ予約コストを支払い,半導体製造業者のキャパシティ準備量の下限値を決める契約である.キャパシティ予約コストは発注量ではなく,予約量に依存するので,セットメーカーがキャパシティ準備コストの一部を負担することになる.既存論文のモデルでは,単位納入価格が外生変数であり,単位キャパシティ予約コストが半導体製造業者の決定変数であるため,サプライチェーン・コーディネーション,つまり,サプライチェーン全体最適期待利益につながるキャパシティ予約契約は必ずしも存在しない.本論文では,サプライチェーン・コーディネーションにつながるこの2 変数の組の範囲を導出する.さらに,サプライチェーン全体最適期待利益の両者への可能な配分の範囲も示す.