歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
エールリッヒ腫瘍の増殖に対するシアル酸, ケラト硫酸, 並びにノイラミニダーゼの効果
竹内 純加藤 裕生吉田 正彦江崎 民夫
著者情報
ジャーナル フリー

1973 年 15 巻 3 号 p. 206-211

詳細
抄録

近年, シアル酸は細胞膜表面の構成成分として重要な役割を果しており, ケラト硫酸は免疫反応と関連していることが明らかにされてきた。我々はさきにコンドロイチン硫酸Cおよびヒヤルロン酸が腫瘍の増殖を著明に促進することを見出し, その作用のメカニズムを追求中であるが, 今回はシアル酸, ケラト硫酸, ノイラミニダーゼの腫瘍増殖に及ぼす効果を実験的に観察した。ddNマウス背部皮下に種々濃度の試薬1mlを注射し, その直後腫瘍腹水1ml (細胞数107個) を同部位に移植して8日目に腫瘍塊を摘出し, 実験群の腫瘍重量と対照 (腫瘍移植に先立って1mlの生理的食塩水を注射) 群のそれとを比較した。その結果0.2%シアル酸溶液及び2%ケラト硫酸にはエールリッヒ固型腫瘍増殖促進作用がみられたが, シアル酸高濃度溶液 (2%) には腫瘍増殖抑制の傾向がみられ, 又ノイラミニダーゼ (20単位/ml) には何らの効果もみられなかった。適当な濃度のシアル酸, ケラト硫酸溶液は細胞膜表面を保護し, 代謝を充進させて, 移植された細胞に好適な環境を提供するものであると考える。

著者関連情報
© 歯科基礎医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top