抄録
Sprecher, R. L. et al.(1967) は, 唾液の分泌機能を比較的長時間にわたって, insituに近い状態に維持させることができる, ラット顎下腺部分灌流法を開発した。しかし, この灌流法を用いて, 唾液分泌機構を詳細に検討する場合には, その灌流条件によって分泌機能が影響を受ける。したがって, その灌流条件を解明しなければ, 部分灌流法を用いても, 唾液腺の正常分泌機構を究明することはできない。
そこで著者は, 非灌流時を対照として, 灌流時の灌流速度を種々変化させたときの顎下腺の血流速度とヘマトクリット値とを観察し, ついで, 各種の分泌刺激を与えた場合の非灌流時および灌流時における顎下腺の血流速度・ヘマトクリット値および唾液分泌速度を測定し, 分泌刺激の種類の差異に基く各測定値の変動を互いに比較検討した。
そして, 以上の実験結果の総合的な分析から, ラットの顎下腺部分灌流法において, 正常な唾液分泌が得られる灌流条件を設定した。