抄録
マウスの3大唾液腺のうちで顎下腺のglucose-6-phosphate dehydrogenase (G-6-P DH) 活性のみに明確な性差が認められた。その結果の要約を記すと,(1) この性差は生後25日目以後に認められ, 成体マウスの比活性 (m unit/mg protein) は雄では72.8±7.3, 雌では38.8±2.8であり, 雄は雌のほぼ2倍である。(2) 成体雄マウスを去勢すると, G-6-P DH活性はほぼ雌のレベルにまで低下する。この去勢マウスにtestosteroneを投与すると, 再び雄のレベルまで回復する。(3) progesteroneおよび17β-estradiol投与は顎下腺G-6-P DH活性に何ら影響をおよぼさない。(4) 顎下腺のG-6-P DH以外の酵素, 例えば解糖経路のkey enzymeなどには性差は認められない。(5) ラットやハムスターの顎下腺のG-6-P DH活性にも弱い性差が認められる。(6) 顎下腺のG-6-P DH活性は線条部顆粒性膨大部の占める計測値と平行しており, 古くから知られる形態学的性差と密接な関係を有する。