1976 年 18 巻 2 号 p. 154-159
数種ネズミ類の歯の大きさについて, 多変量解析法を用い各種間の生物学的距離を算出し, それらの関係がどのような因子に起因しているかを分析した。その結果, Mahalanobisの汎距離 (D2) では, ネズミ亜科の各属内およびハタネズミ亜科内で近い距離を示した。これらを正準変量分析により二次元平面に投影してみると3つの群を形成し, その相対的位置関係が明らかになった。次に, 因子分析により, クマネズミ属とハタネズミ亜科を分ける因子として歯冠頬舌径に関する大きさの因子が強く影響し, またクマネズミ属とアカネズミ属を分ける因子として歯冠頬舌径に関する大きさの因子と上・下顎第3大臼歯と下顎第1大臼歯の歯冠近遠心径に関する大きさの因子が同程度に影響していた。