歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
18 巻, 2 号
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  • I. 各種唾液腺腫瘍における酸性粘液多糖体について
    山本 浩嗣
    1976 年 18 巻 2 号 p. 115-124
    発行日: 1976/06/30
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    93例の各種唾液腺腫瘍の酸性粘液多糖体についてPAS, ムチカルミン, トルイジンブルー染色 (pH 4.1) とコンドロイチナーゼ・ABC, 牛睾丸ヒアルロニダーゼ, ストレプトミセス・ビアルロニダーゼ, シアリダーゼによる酸性粘液多糖体消化酵素処理したものとによる組織化学的検索を行なった。
    上皮性粘液はシアル酸を, 間葉性粘液はコンドロイチン硫酸A, Cとビアルロン酸を含有し, 前者は腺上皮細胞に, 後者は筋上皮細胞に由来するものと考えられ, 多形性腺腫と腺様嚢胞癌は筋上皮細胞が, 腺リンパ腫, 粘表皮腫, 腺癌は腺上皮細胞が腫瘍成分の主体をなしているものと思われる。
  • 矢嶋 俊彦, 小沢 英浩, 小林 茂夫
    1976 年 18 巻 2 号 p. 125-134
    発行日: 1976/06/30
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    軟骨のカルシウム代謝, 石灰化機構の解明の一つとして, 形成期骨端軟骨細胞における45Caの取り込みについて, 生後3~5日ラットを用い, in vitro, in vivoでの実験を光顕オートラジオグラフィーと45Ca-測定法を用いて検討した。
    オートラジオグラフィーの結果は, in vitro, in vivoともによく一致し, 45Ca投与後5分で多くの現像銀粒子が主として静止層, 増殖層の軟骨細胞と, 石灰化開始部位の基質にみられた。時間経過とともに増殖層から泡状層における細胞上の銀粒子は増加し, 180分後では, これらの細胞周辺の基質にも銀粒子の出現を認めた。24時間後では, この傾向はより顕著になった。なお, 対称として用いた気管軟骨には, 45Caの取り込みはほとんど観察されなかった。
    一方, 分離軟骨細胞を用いた45Ca-測定実験においても, 軟骨細胞による54Caの取り込みは, 経時的にほぼ直線的な増加を示すことが確められた。またPTHによる45Caの取り込みに対する抑制効果, ouabainによる阻害効果が認められた。
    以上の結果より, 形成期骨端軟骨の軟骨細胞は活発にCaを取り込み, これを蓄積, 輸送することにより, 石灰化機構と密接に関与する可能性が考えられる。
  • 和歌山県岩橋千塚「大谷山39号古墳」人の場合
    藤原 知, 藤原 定
    1976 年 18 巻 2 号 p. 135-146
    発行日: 1976/06/30
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    岩橋千塚「大谷山39号古墳」出土の小児被葬者の全永久歯について観察し, 歯冠諸形質の発現状態をも含めて所見を述べた。その要点は, 1) 矢崎のA型に属する上顎切歯唇面浮彫像, 2) 複シャベル型の上顎切歯, 3) シャベル型のI2と半シャベル型のI1|I1|I2, 4) 唇側面辺縁隆線 (酒井らの++型) をもつC|C, 5) 不完全な介在結節をもつP1|P1, 6) 副咬頭をもつP1|P1, 7) カラベリー結節をもつM1|M1 (酒井らの+型), 8) hypoconeの退化状況 (M1|M1, 4型: M1|M1, 4-型, Dahlberg分類による), metaconeの退化状態 (M1|M1, -型: M1|M1, +型, 鈴木らの分類による), 10) M1|は+型 (5咬頭性), |M1はY型 (5咬頭性), M2|M2はY型 (6咬頭性) の咬合面裂溝形態, 11) M2|M2にみる第6咬頭の存在, などである。以上をふまえて, 本古墳人の歯牙が総じて “類モコー形質群” を有していると判断しうる旨を述べた。
  • 佐藤 温重, 小沢 和子, 岡田 洋昭
    1976 年 18 巻 2 号 p. 147-153
    発行日: 1976/06/30
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    家兎歯胚由来細胞系 (RP細胞) の生体内機能特性の維持を明らかにするために, RP細胞の各継代時に24時間旋回培養を行い, 形成された細胞集塊をさらに器官培養し, その後集塊の組織所見を検索し次の結果を得た。
    1) 1, 2, 13, 18代の各細胞から形成される集塊の大きさはほぼ同一で, 継代にともなって集塊形成能に変化は認められなかった。
    2) 初代および2代細胞から形成される集塊には大型で主として結合織からなるものと, 比較的小型で組織分化の著しいものとが認められた。組織分化の著しい集塊では象牙芽細胞様細胞の分化, そして基質の分泌が認められ, その基質は組織学的, 組織化学的に前象牙質および石灰化象牙質様であった。上皮性細胞からはエラスチン, ケラチンの形成を認めた。しかし正常な歯胚の再形成を認めることはできなかった。
    3) 13および18代細胞から形成された集塊においては主として結合織からなるものが多かったが, その一部に象牙質様基質とエラスチンを含む基質の形成を認めた。
    以上の所見からRP細胞は継代数の少ないものでは歯胚としての分化機能を保有していることが明らかとなった。
  • 山田 博之, 花村 肇
    1976 年 18 巻 2 号 p. 154-159
    発行日: 1976/06/30
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    数種ネズミ類の歯の大きさについて, 多変量解析法を用い各種間の生物学的距離を算出し, それらの関係がどのような因子に起因しているかを分析した。その結果, Mahalanobisの汎距離 (D2) では, ネズミ亜科の各属内およびハタネズミ亜科内で近い距離を示した。これらを正準変量分析により二次元平面に投影してみると3つの群を形成し, その相対的位置関係が明らかになった。次に, 因子分析により, クマネズミ属とハタネズミ亜科を分ける因子として歯冠頬舌径に関する大きさの因子が強く影響し, またクマネズミ属とアカネズミ属を分ける因子として歯冠頬舌径に関する大きさの因子と上・下顎第3大臼歯と下顎第1大臼歯の歯冠近遠心径に関する大きさの因子が同程度に影響していた。
  • 第1編上顎大臼歯について
    藤原 知, 島田 武男, 藤原 定
    1976 年 18 巻 2 号 p. 160-170
    発行日: 1976/06/30
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    本報告はポリネシア人生体54名 (11~13歳の男性) の口腔石膏顎模型について実施した形態学的研究の第1報であり, 本報告では上顎大臼歯にかかわる若干の歯冠形質が取り扱れている。以下に成績の要旨を述べる。ポリネシア人におけるカラベリー結節の出現率 (酒井・花村の基準による) はM1では64.21%, M2では14.82%を示して各人種中総じて高率の部類に属する。metaconeの退化出現率 (鈴木・酒井の基準による) はM1では11.32%で各人種中低率の部類に属し, M2では64.1%を示して高率のものに属する。hypocone退化状態については, MM1ではすべてが4咬頭歯でhypoconeは4-型 (Dahlbergの基準による) 以上の退化傾向を示さない。MM2では, 4咬頭性と3咬頭性とがほぼ全体を切半し, その大多数はhypoconeの退化を多少とも示し, 約18%の頻度でその完全な消失をみる。各形質間の相互関係についても調査したが, 観察歯数の不足もありコメントを付すことなくデータのみを呈示した。
  • II. 舌における動静脈吻合について
    岸 好彰, 高橋 和人, 横地 千仭, 伊藤 春生
    1976 年 18 巻 2 号 p. 171-181
    発行日: 1976/06/30
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    われわれは, 口腔付近の微小循環に関する研究のひとつとして, 犬の舌粘膜, 特に粘膜固有層にみられる動静脈吻合について, 血管鋳型標本と凍結割断標本によって, 解剖学的形態と血管内腔壁の表面構造について, 走査型電子顕微鏡を用いて立体的に観察した。粘膜固有層には, 下層に動脈網, その上層に静脈網が相接して広がり, 網目を構築し, これらの血管網を下方より見ると, いわゆるブドウ棚状の血管網を構成している。ここには動脈と静脈とを直接交通する技, すなわち動静脈吻合が多数あり, その分布傾向は, 舌尖部では多く, 舌体部に向うに従って減少する。その形態には多くの種類がみられる。鋳型標本の表面には, その血管内腔壁の表面構造が印記され, 凍結割断標本によって血管内腔壁の観察, 比較した結果, 十分に印象されていることを確認し, 鋳型表面を検鏡することによって動静脈の判定, さらに動静脈吻合の血管内腔壁の表面構造の違いを明らかにした。
  • 久保木 芳徳, 大串 貫太郎, 総山 孝雄
    1976 年 18 巻 2 号 p. 182-187
    発行日: 1976/06/30
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    フクシン染色法によって染別されるウ蝕象牙質2層のコラーゲン線維のアミノ酸組成と分子間架橋結合のパターンを健全象牙質のそれと比較検討した。フクシンに染まらないウ蝕象牙質第2層 (深層部) のコラーゲンは, 健全象牙質に比較して架橋結合が少なく, 代りに架橋結合の前駆体が増加していた。このことは, 架橋結合とその前駆体間の平衡関係が前駆体側に可逆的に推移しているものと考えられた。これに対して, フクシンに濃染するウ蝕象牙質第1層 (浅層部) のコラーゲンは, 架橋結合とその前駆体がともに著しく減少しており, さらに未同定のものを含む多数の還元性物質が生じており, このことから第1層ではコラーゲンが非可逆性の変性をとげているものと考えられた。各層のアミノ酸組成には有意の差は認められなかった。
  • 山下 靖雄
    1976 年 18 巻 2 号 p. 188-238
    発行日: 1976/06/30
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    爬虫類は, 魚類や両生類から哺乳類への移行として, 系統発生学的に重要な位置づけがなされている。したがって, 歯の形成機構を究明するための比較発生学的研究の一端として, 爬虫類のワニを材料とし, 内エナメル上皮の初期段階から, エナメル質基質形成期末期にいたるエナメル芽細胞の形態と構造に関する時期的な推移について, 透過電子顕微鏡を用いて観察をおこなった。
    内エナメル上皮は, エナメル芽細胞に分化をおこすにしたがって伸長するが, ワニでは細胞の伸長が緩慢で, 象牙質基質形成の後期に, 核とGolgiの移動が行なわれ, さらにエナメル質基質の形成がやや進行した後に, 細胞長が最大となる。
    芽細胞が分化をおこす過程や形態と構造の推移に関しては, 魚類とは多少異なる点もあり, 基本的に哺乳類のそれと類似し, 中胚葉エナメル質の魚類から哺乳類への移行を示している。
  • 日浦 透
    1976 年 18 巻 2 号 p. 239-254
    発行日: 1976/06/30
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ラット三叉神経終止核, 特に下顎神経投射部位からの二次経路を明らかにする目的で, 三叉神経終止核の下顎神経領野に限局した部位を破壊し生じる変性線維をFink-Heimer法, およびMarchi法を用いて染色した。
    上記三叉神経終止核の破壊部位から発する視床への変性線維としては内側毛帯と共に上行する腹側路を経由して破壊側とは反対側の視床に達するものが存在するが, 背側経路および同側性を上行して視床に終止するものは見られながった。視床に於ける終止部位と変性終末量は三叉神経終止核の破壊の部位により差が見られた。即ち直接視床に最も多くの線維を送るのは上知覚核で, 脊髄路核中間亜核, 尾側亜核がこれに次ぎ, 吻側亜核からの投射は最も少なかった。従って下顎神経から直接視床への情報伝達は, 上知覚核, 次いで脊髄路核中間および尾側亜核を介して伝達されると思われる。また同側性経路は直接投射ではなく, 途中でシナプスを介するものと思われる。
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