1977 年 19 巻 1 号 p. 149-158
抗腫瘍抗生物質neocarzinostatin (NCS) はbleomycinと同様, 発熱をひきおこすものである。そこでNCSの家兎体温および体温調節機構にどのような影響をおよぼすかを検討してみた。1. 一定量のNCSによる家兎体温の上昇は, 骨格筋の熱量生産機構 (生体酸化機構) に直接影響して熱量生産を増加させるものである。2. NCSによる体温上昇は, 一方において対熱体温調節をもひきおこし熱量放散を増加させるものである。3. また他方では, 対熱化学的体温調節を調整している副交感神経性狭義体温調節中枢を興奮させ, 肝臓における熱量生産を減退させるものである。4. けれども, 耳介血管が拡張し, 多呼吸がおこり熱量放散が増加することは, 対熱理学的体温調節をする副交感神経性体温保持調節神経中枢および多呼吸中枢が興奮するためばかりではなく, 耳介血管を筋肉性に拡張させ, また, 多呼吸中枢も直接興奮させるものである。