1978 年 20 巻 4 号 p. 719-728
歯根象牙質吸収部へのセメント質の沈着の様相を形態学的な立場からとらえるために, ラット右側上顎第一大臼歯に一過性の過剰な力を加えて圧迫側に歯根象牙質の吸収を惹起せしめ, さらにその吸収部ヘセメント質 (acellular cementum) を沈着させて, その沈着部を電顕的に観察した。
その結果, 未脱灰標本では, 吸収部象牙質表層は電子線透過性の高い層, すなわち, 吸収層としてとらえられ, その吸収層の上にセメント質結晶は沈着する。象牙質吸収層表面は決して平滑ではなくサボテン状あるいは樹枝状に結晶塊が突出ているが, 突出部間もセメント質結晶により充分満たされている。したがって, 吸収部象牙質とセメント質の二つの組織は象牙質結晶とセメント質結晶の嵌合のみならず吸収部象牙質突出部とセメント質が互に組織塊として嵌合することによっても接合している。脱灰標本では, amorphous substanceによりmaskされたセメント質コラーゲン線維が顆粒状に分解された象牙質基質に接してみられる。