歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
Streptococcus mutansのglucosyltransferaseの細胞表層への結合におけるグルカンの役割
渋谷 耕司古賀 敏比古井上 昌一
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1978 年 20 巻 4 号 p. 729-737

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抄録

Streptococcus mutans AHTおよびその他の数株をTodd-HewittおよびTrypticase Soy培地で培養すると, 産生されたglucosyltransferase (GTF) 活性の大部分が細胞に結合して存在した。この現象は, これらの培地に存在する微量のスクロースよりS. mnutansが自身のGTFによって合成した菌体結合グルカンへの菌体外GTFのアイソザイムの非特異的な吸着に原因することが示された。この爽雑スクロースより合成されたグルカンはまた遊離型のGTFの酵素分子を凝集させ, この結果細胞表層グルカンへの吸着の効率を高めること, 更には菌体の微弱な凝集を惹起することが観察された。これらの現象は, 上記の培地をinvertase処理することによって排除することができた。
一方Brain Heart Infusion, Trypticase-glucose, Trypticase-fructoseおよびTrypticase-Tryptose-Yeast extracts培地で培養したS. mutansの産生するGTFは, invertase処理の有無にかかわらずその約10%は常に細胞結合型として存在した。また同時に得られた菌体外に遊離のGTFもグルカンによる凝集よりも小さいが, 巨大な凝集塊を形成していることが示唆された。これらの現象はグルカンに依存しない別の機序によるものと考えられるが, その詳細は不明であった。

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