抄録
定型的な乳頭状嚢腺リンパ腫の組織像を示した, 耳下腺の腺リンパ腫2例 (57歳男性, 55歳女性) について, その上皮成分の超微所見を検討した。
上皮組織は一般に2層性あるいは多列様配列を示し, 腺腔側の高柱状細胞, 基底側の円錐形ないし立方状細胞は, ともに著しい増生肥大を示す多様な形状のミトコンドリアを胞体内に充満した, oncocyte特有の所見を示した。Oncocyteには, 通常型に混じって, 膨化したミトコンドリアと濃縮核を有する“condensed”oncocyteが識別され, 変性のより強い細胞型とみなされた。腺腔に面する高柱状細胞には, しばしばアポクリン様分泌像が認められ, 分泌運動に関連すると思われるアクチン様microfilament束や酸性ホスファターゼ活性を示す1ysosomeの存在が特徴的であった。腺腔面には高率に多数のmotile ciliaを備えた線毛上皮が出現し注目されたが, 本腫瘍の組織起源を示唆する所見とはみなしえなかった。一方, 基底側細胞は筋上皮性分化を欠いており, oncocyteの筋上皮起源の考えも支持できなかった。