歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
修復象牙質の形成に関する微細構造学的ならびに細胞化学的研究
相場 剛
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1983 年 25 巻 1 号 p. 299-328

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抄録
修復象牙質の形成細胞およびその形成過程を明らかにする目的で, ラット臼歯に実験的に窩洞形成を行い, 修復象牙質の形成量の経時的変化を硬組織時刻描記法で検索すると共に, 窩洞下の歯髄に観察された細胞について微細構造学的特徴,細胞化学的特徴およびオートラジオグラフィーによるプロリンの代謝過程を経時的に検索した。
ラット臼歯における修復象牙質の形成は窩洞形成後速やかに開始され, その形成量は窩洞形成後5~15日目で多く, それ以後減少した。窩洞形成を行わない対照群の象牙芽細胞は細胞内小器官の発達も悪く, プロリンの代謝およびアルカリ性フォスファターゼ活性も僅かであったのに対し, 窩洞形成後3日目, 7日目の窩洞直下に観察された前象牙芽細胞,幼若象牙芽細胞様の紡錘形細胞は明瞭な核小体を有し, ゴルジ体と粗面小胞体の発達も顕著で蛋白合成および分泌の活性が高いことを示唆していた。またプロリンの取り込み,象牙前質への分泌も活発で,アルカリ性フォスファターゼ活性も細胞膜にそって強く認められた。窩洞形成後18日目に至ると, これらの細胞は成熟した象牙芽細胞の形態を呈するようになり, プロリンの代謝活性およびアルカリ性フォスファターゼ活性はやや減弱傾向を示した。
以上の結果より, 修復象牙質は最初活発な基質形成能を有する幼若な象牙芽細胞により形成され, これらの細胞は成熟した象牙芽細胞に分化しながら修復象牙質形成を行っていくことが示された。
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