歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
Metabolic alteration in bovine periodontal ligament and dental pulp mitochondria induced by bacterial endotoxin
Shinichi Yokomizo
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1983 年 25 巻 4 号 p. 1097-1110

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抄録

歯周疾患の進行においては従来, 宿主細胞と細菌細胞壁成分であるLPSとの直接作用および免疫機構を介する間接作用の関与が示唆されている。しかしLPSが宿主細胞のオルガネラの物質代謝に対しどのような効果をもつかは明確ではない。そこで本研究ではLPSのオルガネラレベルでの作用部位と考えられるミトコンドリアに注目し, その基礎的代謝であるTCA cycleへのLPSの効果と, その結果生ずるアミノ酸生合成への影響について, succinate-1, 4-14Cを添加基質としたshort term incubation系を用いて検討を加えた。その結果, ウシ歯根膜および歯髄ミトコンドリア画分のLPS添加群ではα-ketoglutarate, malate, fumarateの生成量の上昇と生成比 (M/F比) の変動が認められた。一方, 歯根膜ミトコンドリア画分において生成された主要アミノ酸はGlu, Asp, Gly, Alaであり, LPS添加群ではcontrol群と比較して, Glu, Gly+Alaの生成量に上昇が認められた。特にα-ketoglutarateとGluの生成量はLPS添加により共に増加しており, LPSが特定の反応系に作用している所見を得た。従って歯周疾患の進行に伴い, LPSが結合組織細胞のミトコンドリアに直接侵襲を与えた場合, 有機酸およびアミノ酸等低分子の代謝性を変化させ, その結果, 細胞質における高分子合成に影響を与える可能性が示唆された。

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© Japanese Association for Oral Biology
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