歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
生体材料の遺伝毒性
第1報: 細胞の変異誘発機序としての“SOS修復機構”のin vitroにおける実験系の検討
兼松 宣武
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1983 年 25 巻 4 号 p. 1090-1096

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抄録

“SOS機能” 発現にともなってDNA合成のfidelityの低下がみられるか否かをin vitroのDNA合成の実験系を用いて検討した。(i) 鋳型DNAとして30分間UV照射 (1.7erg/mm2/sec) をおこなったpoly (dT) oligo (dA) ならびにUV照射をおこなっていないpoly (dT) oligo (dA) の2種類を16nmol/reaction tuble,(ii) DNAポリメラーゼの代りに “SOS機能” の発現したE. coli tif菌の抽出液ならびに “SOS機能” の発現していないE. coli. tif菌の抽出液を各々21.5μg/reaction-tuble,(iii) 330pmol3H-dGTP (S.A. 7.5×103cpm/pmol) 485pmol3H-dCTP (S.A.5.2×103cpm) 5.6nmol14C-dATP (S.A.±60cpm/pmol),(iv) 補酵素として0.2mM MnCl2, 300mM KCl, 以上の反応液を使用し, pH8.6, 37℃30分間incubateすることによりDNA合成をおこなわしめた。結果として, SOS機能が発現したE. coli tif菌の抽出液をDNAポリメラーゼの代りに用いた場合においてもDNA合成のfidelityの低下はみられなかった。この理由の一つにE. coli tif菌の抽出液中に含有されているtriphosphataseの作用により, reactiontubule中のdNTPが加水分解されるためであろうことが示唆された。

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