歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
Streptococcus mutansの産生する溶菌酵素に関する研究
I Streptococcus sanguis溶解菌株の分離とその諸性状
馬場 久衛五十嵐 清治
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1983 年 25 巻 4 号 p. 932-946

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抄録

う蝕の発病に伴って歯垢中のレンサ球菌種に変動がみられる。この変動に関与する因子の一つを検索する目的で, 幼児の歯垢材料よりStr.sanguisを溶解する菌株の分離を試みた。Str.sanguisの加熱菌体を混入した平板培地上で集落の周囲に透明帯を形成するものをStr.sanguis溶解菌株とした。その結果, レンサ球菌種に変動がみられたEの小窩裂溝の歯垢材料より, Str.sanguis溶解菌株が多数分離された。菌の形態・配列, 集落の形態, 生化学的性状検査, ガラス壁固着性および不溶性多糖類の産生性などの諸性状検査の結果, これらのStr.sanguis溶解菌株はいづれも同一菌種で, Str.mutansと同定された。本Str.sanguis溶解菌株はまた, 同一口腔中の歯垢材料より分離された各種のレンサ球菌種のうち, Str.sanguisに対してのみ強い溶解性を示した。このことから, う蝕の発病に伴う歯垢中のStr.sanguisとStr.mutansの対照的な増減に本Str.sanguis溶解菌株が少なからず関与していることがうかがわれた。また, 本Str.sanguis溶解菌株は, serotypeに関係なく用いたすべてのう蝕原性Str.mutans株に対しても強い溶解性を示した。しかし, 同じStr.mutansであるStr.sanguis溶解菌株自らに対しては弱い溶解性を示すにとどまった。さらに, う蝕原性Str.mutms株の中にもStr.sanguisに対して溶解性を示すものが存在した。

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