歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
舌上皮における細胞動態解析: 舌上皮部位別による細胞増殖活性と細胞交替時間
日野 晃伸陣内 研一森脇 一成石曾根 肇小澤 俊文西連寺 永康大原 弘
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1983 年 25 巻 4 号 p. 924-931

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抄録

C3Hf/Heマウスの舌粘膜基底細胞の細胞周期, 細胞更新に関する解析を舌の前部, 中部, 後部につて3H-チミジン標識によるオートラジオグラファーを用いて行い, 次の結論を得た。
1) 細胞周期時間 PLM法で求めた舌部位別の細胞周期時間は, 中部で長く (33.6時間), 前後部でやや短かった (28.1時間, 25.6時間)。この差は各部位別でDNA合成期, 及びG2期に差はなく, 主としてG1期の長さの差に起因している。また, Brown & Oliverの方法は, C3Hf/Heマウスの舌上皮組織の場合, 細胞周期時間の算定には利用できないと考えられ, この方法では細胞交替時間 (turnover time) が算定される。
2) 細胞交替時間 これは標識細胞の分化層への移行を追跡する方法と基底細胞層から標識細胞が離脱する率を調べる方法によって求められた結果, 前部では72時間, 中, 後部では60時間と判定され, 前部が中・後部より12時間長いと認められた。
3) 基底細胞層における標識率3H-チミジン投与後30分の基底細胞の標識率は, 前部で22.1%, 中部で31.4%, 後部で39.5%であり, 前部で低く, 後部で高くなる。
4) これらの結果を総合すると細胞増殖活性は, 舌前部に比べて中, 後部の方が高いとみられる。このことは, 前部の分化層での滞在時間が, 中・後部の滞在時間に比べて長いという観察結果と関連するものと思われる。

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