歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
Aminoacetonitrileにより誘発した口蓋裂ラットにおける口蓋筋の発生に関する研究
南 謙二
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1984 年 26 巻 3 号 p. 882-929

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抄録

ラットの母体にlathyrism誘発剤の一つであるaminoacetonitrile (AAN) を投与して口蓋裂を誘発し'その口蓋筋の発生過程を光学顕微鏡ならびに電子顕微鏡を用いて観察した. 妊娠15.0日のラットに200mg/kgのAANを一回投与すると, 89.3%の胎仔に口蓋裂が生じた. 光顕的には, 3種の口蓋筋, すなわち口蓋帆張筋, 口蓋帆挙筋, 口蓋咽頭筋は正常なものと同一の時期と場所に発生していたが, 正常な口蓋の形成時期である胎生17.0日以降, 筋の分布範囲, 筋線維の外形に変化が生じていた. 電顕的には, 細胞内の筋原線維に形態学的変化が認められ, 筋原線維の形態の変化は細胞小器官の分布にも影響を与えていた. これらの変化は発生の進行とともに著明になっていった. AANの投与によって誘発された口蓋裂は, 口蓋板周囲の骨格系の複雑な変化によって生じたものと考えられ, 口蓋筋の形態学的変化はこのような発生途上の筋周囲の形態の変化によって筋の正常な発育の場が失なわれたためと考えられる.

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