歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
Streptococcus mutans 6715株接種ラットにおけるMutastein の齲蝕抑制効果
中村 康則桑島 治博増原 泰三遠藤 章
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1985 年 27 巻 2 号 p. 603-610

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抄録

Streptococcecs mutansのグルカン合成酵素阻害剤Mutasteinの齲蝕抑制効果の有無について, 齲蝕誘発性飼料にMutasteinを0%(Cont.群), 0.04%(0.04%M群) および0.4%(0.4%M群) 混入させた各飼料で, S.mutans 6715株を接種させた幼弱ラットを57日間飼育するin vivoの齲蝕実験を試み, Keyes法によって齲蝕検定を行なった。
S.mutansの歯面への付着量は菌接種後2, 5および8週目の各時期でCont. 群≧0.04%M群>0.4%M群の傾向を示し, 0.4%M群は経時的に明らかに減少した。一方, プラーク付着量について臼歯全体でみると, Cont.群>0.04%M群≒0.4%M群の傾向がみられた。次に, 齲蝕の部位と齲蝕スコアーについてみると, 隣接面齲蝕はいずれの飼料群にもみられなかったが, 裂溝部ではエナメル質齲蝕の他に軽度または中等度の象牙質齲蝕がみられ, 齲蝕スコアーの順位はCont.群>0.04%M群>0.4%M群であった。一方, 平滑面ではいずれの群もエナメル質編蝕に限られたが, 裂溝部とは逆で0.4%M群>0.04%M群>Cont.群であった。これらの部位別スコアーを総計して齲蝕度を比較すると, Cont.群に対して0.04%M群ではわずかであったが, 0.4%M群では34%(裂溝部のみでは59%) の抑制効果が認められた。なお, Mutasteinの毒性については, 各飼料群の体重曲線, 一般経過の観察, さらに剖検および肺, 肝, 腎についての病理組織標本所見にも特に異常は認められなかったので, 本実験条件下では毒性はなかったものと考えられる。
以上の成績から, Mutasteinは齲蝕抑制効果を有することが明らかとなったが, この効果発現にはS.mutansの歯面付着量の減少が大きな原因となることが推測された。さらにその経口毒性が低いことを考え合わせると, 齲蝕抑制剤としての実用への期待と興味がもたれる。

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