1988 年 30 巻 3 号 p. 293-305
ネコ下顎歯の歯髄にHRPを投与した後, 急性歯髄炎を防止する目的で, ステロイド系抗炎症剤のPrednisoloneを投与し続けた結果, HRP投与側の三叉神経節および三叉神経中脳路核に多数のHRP陽性細胞を見いだした。三叉神経節に見られた陽性細胞は, 三叉神経節の後外側部に局在し, 36μm以上の細胞体直径をもつものが総数の46.3%であった。一方, 中脳路核に認められた陽性細胞は, 中脳路核の吻尾方向のA 3.5からP 3.5の広範囲に出現し, 下丘の後端レベルに偏在する傾向が見られた。また, 中脳路核ニューロンは全て偽単極性であり, 36μm以上の細胞体直径をもつものが総数の72.8%を占めた。三叉神経節および中脳路核における陽性細胞体の直径の分布を, 三叉神経主感覚核および尾側亜核の細胞体について報告されている分布と比較することによって, 歯髄支配の三叉神経節ニューロンは主として痛・温度覚に, 中脳路核ニューロンは主として触・圧覚に関与していることが推察される。