1989 年 31 巻 5 号 p. 475-484
熱創傷治癒過程をC3Hf/Heマウスの口唇粘膜上皮を用いて細胞動態学的に調べ, 以下の結論を得た。
1) 細胞周期時間: 熱傷群において, PLM 曲線から Takahashi & Mendelsohn の方法で求め, 25.4時間と算定された。これは非熱傷群の39.5時間より約36%の短縮となった。
2) 基底細胞の分化層への移行: Brown & Oliverの NB/NT 法により, 分化層への移行開始時間は, 熱傷群で6時間後で, 非熱傷群より約70%短縮したが移行速度には変化はみられなかった。
3) 細胞交替時間: 上皮各層における標識細胞のピーク形成時間より求め, 熱傷群で2日となり, 非熱傷群の4日より50%短縮した。
4) 標識基底細胞分布の経時的変化: 熱傷に対する細胞再生増殖反応は, 熱傷部辺縁健康側から200ないし300番目の離れた細胞の部位から標識率のピークとして始まり, 時間の経過と共に求心的に移行する。