歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
歯根膜の形成初期における形態変化とフィブロネクチンの関連についての研究
石井 秀彦
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1989 年 31 巻 5 号 p. 485-513

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抄録

歯根膜線維形成の初期過程を形態学的に観察すると共に, フィブロネクチン (FN) の局在を免疫組織化学的に検索した。この過程における細胞動態は上皮・間葉相互作用の観点から4つのstageに分類することが出来た。上皮鞘基底膜に近接した歯小嚢間葉細胞の細胞膜上にはFNの反応が強く認められ (stage I), 歯小嚢間葉細胞が上皮細胞と接触し (stage II), 離開した上皮細胞間に侵入する (stage III) 際に, FNの反応は上皮細胞と接触する歯小嚢間葉細胞の細胞膜上に強く認められた。FNの集積が認められる象牙質表面に接触した歯小嚢間葉細胞は細胞内小器官が発達していた (stage IV) 。侵入した突起の周囲には横紋のない細線維がその長軸に沿って形成され, FNの反応は突起と線維の接触部に強く集積していた。細線維が歯根膜線維束へと成熟するとFNの反応は弱くなっていたが, 象牙質のコラーゲン線維との交錯部には強く認められた。すなわち, FNは歯小嚢間葉細胞が上皮細胞の間隙を拡大させ, 細胞間を通過して象牙質表面に達すること, 歯小嚢間葉細胞を線維芽細胞に分化させ, 歯根膜線維束を規定された方向に形成させること, この歯根膜線維束を象牙質表面に接着させることに関与すると考えられた。

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