抄録
グルタミン酸化合物の味覚効果に対する陽イオンの役割を明らかにするために, グルダミン酸ナトリウム (MSG), グルタミン酸カリウム (MPG), グルタミン酸カルシウム (MCG) の味覚特性をラットを用いて比較した。嗜好テストではMSG, MPG, MCGの3者に有意な差は見られなかった。MSGを条件刺激で味覚性嫌悪条件づけを行うと, MPGの飲水量が対照群に比べ有意に増加し, MCGの飲水量に変化はなかった。MPGで条件づけを行うと, MPGの飲水量は減少し, MCGの飲水量は増加する傾向があり, MSGの飲水量に有意な変化は認められなかった。MCGで条件づけを行うとMCGの飲水量は減少し, MSG, MPGの飲水量に変化はなかった。各溶液に対する鼓索神経の反応では, MSG, MCG, MPGの順に小さくなった。舌咽神経の反応は3者とも小さかったが, 反応の大きさにほとんど差はみられなかった。これらの結果より, MSG, MCG, MPGに対するラットの嗜好性に相違はなく, 少なくとも鼓索神経を介して3者を識別していることが示唆された。