歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
ラット切歯歯髄のレクチン組織化学的研究
関 孝史
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1992 年 34 巻 4 号 p. 350-363

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抄録

ラット切歯歯髄組織の各部における複合多糖の染色性の相違を, ノイラミニダーゼ前処理を組合せたレクチン組織化学により検索したConA, RCA-IおよびLFAは, 象牙芽細胞, エナメル芽細胞および歯髄細胞の細胞質に反応した。ConAおよびRCA-Iの染色性は, 酵素前処理に影響を全く受けなかった。一方, 象牙芽細胞および歯髄細胞でのPNA, SBAおよびMPAの染色性は酵素処理に影響を受けやすかった. すなわち, 酵素未処理切片では, これらのレクチンに反応する細胞は全くみられなかったが, ノイラミニダーゼで処理をした切片では, 象牙芽細胞および歯髄細胞ともに, 明らかな陽性所見を認めた。エナメル芽細胞では, PNA, SBAおよびMPAは, 酵素処理, 未処理にかかわらず, 細胞質内の核上部に反応した。これらの結果は,(1) 象牙芽細胞, 歯髄細胞およびエナメル芽細胞は, ConA, RCA-1およびDLFAで検出される共通のオリゴ多糖をもつ,(2) エナメル芽細胞はPNA, SBAおよびMPAの染色性から, 末端にガラクトースあるいはガラクトサミンをもつ複合多糖をも所有する,(3) しかしながら, 象牙芽細胞および歯髄細胞では, PNA, SBAおよびMPAで検出される複合多糖の末端糖は, シアル酸によりマスクされているシアル型糖鎖の可能性が示唆された。これらの末端糖の糖鎖配列は, 象牙芽細胞とエナメル芽細胞のそれぞれの機能解析に重要であることが推測された。

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