歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
野生ハツカネズミ (Mus musculus molossinus) にみられた歯と顎骨の加齢変化
高田 靖司酒井 英一植松 康立石 隆
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2002 年 44 巻 3 号 p. 203-209

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抄録

齢推定した野生ハツカネズミの晒骨頭蓋 (n=443; 月齢0.6-16.2) を観察し, 大臼歯歯冠の咬耗速度や, 上・下顎骨の歯槽骨の吸収を調べた. これを野生ハツカネズミと同様の食物を与えて飼育したハツカネズミの晒骨頭蓋 (n=36: 月齢0.6-10.0) と比較した. 野生ハツカネズミでは, 寿命が短く, また飼育したネズミに比べて大臼歯の歯冠が急速に咬耗し, 歯槽骨の著しく吸収された歯周疾患がみられた. 野生集団では, 早くも生後3カ月で歯冠が著しく咬耗し, 歯槽の槽間中隔や根間中隔が吸収・消失したネズミが現れた. このことは, 野生集団で加齢が急速に進行したことを示している. 歯槽骨の吸収は歯冠の咬耗や齢と関連していた. 野生ハツカネズミでみられた, 歯冠の著しい咬耗や歯槽骨の吸収の原因や背景を考察した. その結果, これらの加齢変化に対して, 彼らの食物や摂食行動が強く影響したと推測した.

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