日本オペレーションズ・リサーチ学会論文誌
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寿命のある目標物に対する最適探索
中井 暉久
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1982 年 25 巻 2 号 p. 175-192

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抄録
冬山登山の遭難者に対する捜索のように、寿命のある目標物に対する探索問題では、目標物を生存の状態で発見する必要があるので、目標物が長く生存できない場所はたとえ探索効率が少々悪くても早く捜索すべきである。この種の問題を次のように定式化する。静止目標物が1つ、n個の箱のどれかに存在する。箱iにいる事前確率をp_iとする。箱iにいる時の目標物の寿命分布をF_i(t)とする。F_i(t)はt=o、∞での確率α_i、β_iと区間(o、∞)上の密度関数f_i(t)より成るものとし、f_i(t)は殆んど至る所で可微分とする。探索費用はどの箱でも同じで単位時間当りc(>o)とする。目標物が箱iにいる時、箱1をt時間探索して発見する条件付確率を1-e^<-λit>(λi>o)とする。これは目標物の生死にかかわらず同じであるとする。目標物を箱iにおいて生存の状態で発見すれば利得ri(>o)を得るが、死滅しておれば利得はゼロとする。探索は目標物の生死にかかわらずそれを発見する迄続けるものとする。この時、利得から費用を差し引いた期待純利益を最大にする最適探索政策を求めよ。以上の問題に対して、まず探策政策が最適である為の必要十分条件をNeyman-Pearsonタイプの式で与え(定理1)、各時刻における最適探索割合を求める(定理2)。定理2は未知の量を含んでおり、最適探索割合を具体的に求め得る形で与えるものではない。そこでfi(t)が全て可微分な場合に限って具体的に求め得る形で最適政策を求める(定理3)。寿命分布が指数分布の場合と一様分布の場合について、それぞれ数値例を挙げ最適政策を求めている。最後に上のモデルを修正して、任意の時刻で探索を打ち切ることができるとして、最適停止問題を考える。停止時刻を固定した時の最適探索政策について、定理1と類似の結果を求め(定理4)、特にfi(t)が全て可微分の場合に最適停止時刻の満たすべき必要条件を与える(定理5)。
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© 1982 日本オペレーションズ・リサーチ学会
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