抄録
変分不等式(Variational Inequality)は、経済やORなど多くの分野における均衡問題を定式化するために広く用いられている。また、変分不等式に対して、最適化問題や非線形方程式の解法を一般化した射影法や対角化法などの手法も近年提案されてきている。通常の変分不等式においては制約集合は凸と仮定されているが、ここではそのような仮定を緩和した変分不等式を考察する。本論文ではまず、制約のない問題に対して勾配法の考え方を拡張した反復解法を提案し、問題に関するある種の単調性の条件のもとでその方法の大域的収束性が保証されることを示す。次に、不等式制約を持つ変分不等式に対して、制約つき最適化問題の解法である乗数法を拡張した方法を提案し、その局所的収束性を証明する。さらに、この方法が非対称なコスト関数を持つ交通流均衡問題に対しても適用できることを示す。最後に、交通流均衡問題を含む幾つかの例題に対する数値結果を報告し、提案した解法の有効性を検証する。