抄録
生産管理システムにおいて、製品や部品の納期管理は重要な課題であり、近年の多品種少量生産の動向とも関連して、納期に関連するスケジューリング問題はますます重要視されつつある。本研究では1機械総納期ずれ損失最小化問題を取り扱う。この問題に対して、分岐限界法による最適化アルゴリズムが提案されているが、アルゴリズムの効率を上げるために隣接する仕事間に成立する隣接仕事対先行関係を定義し、それに基づく削除基準を考える。また隣接仕事対先行区間をO(n^2)の手間で有効に求める方法を示す。さらに、上述した削除基準を導入したアルゴリズムの有効性を種々の納期特性を有する数値例を用いて検討した結果、以下のことが明らかとなった。(1)隣接仕事対先行関係に基づく削除基準を導入したアルゴリズムを適用することにより、単純な分岐限界法を用いるアルゴリズムの場合に比べて、約10分の1程度の計算時間と発生ノード数で最適解を求めることができる。(2)異なる納期特性の問題を考え、各特性を持つ問題に対して4種の仕事順を比較した結果、初期解として仕事を納期順に並べかえた後、隣接仕事対先行関係が成立するまで隣接仕事の交換を行うことにより、良好な解が得られることが多い。このようにして得られた初期解に対して、本研究で提案したアルゴリズムを適用すると、最適解が得られるまでに要する平均CPU時間、総発生ノード数は、探索完了までに要する平均CPU時間、総発生ノード数の1/2程度である。特に納期の厳しさが緩く、ばらつきが大きい特性をもつ問題に対して顕著である。この性質よりこの種の問題に対しては、計算打ち切り時間を適切に設定することにより最適解あるいはよい近似解を効率的に求めることができる。