日本視能訓練士協会誌
Online ISSN : 1883-9215
Print ISSN : 0387-5172
ISSN-L : 0387-5172
一般講演
重複障害児の視機能の特性と視能訓練の工夫
林 京子内田 冴子
著者情報
ジャーナル フリー

2009 年 38 巻 p. 287-296

詳細
抄録

 重複障害児は視覚障害を高率に伴うことが知られている。今回、10年以上長期観察した21例の重複障害児において視能検査・訓練の工夫、視能評価について検討した。
 対象21例はすべて視覚障害、言語障害(100%)を有し、知的障害、身体障害(90.5%)、聴覚障害(4.8%)を合併していた。初診時年齢は0~8歳、現生活年齢は10歳~29歳、現発達年齢は0~6歳であった。特に評価の基準を発達年齢と生活年齢から考察するため、発達年齢を乳幼児精神発達診断法(津守式)、KIDS乳幼児発達スケール等の発達検査で算出した。また、視力検査、屈折矯正、眼鏡装用状況、視能訓練も生活年齢と発達年齢から検討した。視能訓練は重複障害児に対して独自に工夫した視力測定練習と眼鏡装用練習、対象の日常生活に合わせた視認識訓練である。
 ランドルト環字ひとつ視力は、生活年齢によらず健常児の発達年齢にほぼ対応する結果を得た。即ち、発達年齢3歳未満群では応答不安定、3~4歳未満の群では66.7%、4~5歳未満の群では83.3%が測定可能であった。眼鏡装用は、必ずしも発達年齢によらず95.3%が部分的装用及び終日装用が可能となった。視能訓練法は、発達年齢の上昇に合わせて、視力測定、眼鏡測定、遮閉法、視認識訓練、輻湊訓練へと向上が認められた。
 重複障害児に対する視能評価、特に視力測定と屈折矯正は発達年齢を基準とするべきであることが判明した。視認識訓練は生活行動に合わせて経年的に工夫し、その向上を療育関係者に情報提供し、生活面との互換性、相乗効果をはかることが重要である。

著者関連情報
© 2009 日本視能訓練士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top