日本視能訓練士協会誌
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一般講演
偏心視の4症例
-適切な補助具と生活指導-
清水 みはる中村 桂子澤 ふみ子濱村 美恵子稲泉 令巳子筒井 亜由美南 稔浩伊藤 史絵菅澤 淳池田 恒彦
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2011 年 40 巻 p. 127-135

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抄録

目的:偏心視の検査法や訓練に関する報告は、過去いくつか散見されるが、偏心視を確立した症例に対して、日常生活で生ずる問題点への対応に関する報告は少ない。そこで今回、偏心視を呈した4症例について日常生活の負担を軽減するための方策について検討を行ったので報告する。
対象:網膜疾患により視力低下をきたした4症例で、加齢黄斑変性(72歳、男性)、錐体杆体ジストロフィー(16歳、男性)、中心輪紋状脈絡膜ジストロフィー(15歳、男性)、錐体ジストロフィー(32歳、女性)である。矯正視力は(0.02)~(0.4)であった。
方法:Goldmann視野計にて視野検査を行い中心暗点を確認し、走査レーザー検眼鏡(SLO)にて固視点の測定を行い、各症例にあった有効な視覚の利用法について検討を行った。
結果:視野は中心暗点または感度低下を認め、SLOによる固視検査では固視点が上方に位置していたものが3例、耳下側が1例であった。偏心視は全例経過中に獲得しており、偏心視の訓練は特に必要なかったが、眼や首などの疲労を伴っていた。対応としては、頭位異常を矯正するためのプリズム眼鏡や羞明感に対して遮光眼鏡、その他拡大鏡などを処方した。日常生活の指導として、場面に応じた視線の工夫や、固視点の位置に合わせた机や椅子の高さなどの生活指導を行った。
結論:偏心視を確立していても、偏心視で見ることは疲労を伴う。日常生活での負担を軽減できるような、適切な対応や指導をするためには、症状の変化に応じながら、経過を見守ることが大切である。

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© 2011 日本視能訓練士協会
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