日本視能訓練士協会誌
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一般講演
Cyclophorometerを用いて斜視手術中に回旋偏位の測定を行った7症例の検討
佐々木 翔林 孝雄金子 博行佐々木 梢臼井 千惠
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2015 年 44 巻 p. 51-56

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抄録

【目的】斜視手術中に測定が可能な新しい回旋偏位測定装置「Cyclophorometer」を開発し、麻痺性斜視に対して術中に回旋偏位を測定した。斜視手術中に回旋偏位の測定を行う意義、および術後の経過について検討したので報告する。
【対象・方法】回旋複視を自覚する斜視患者7例(男性3例、女性4例、平均年齢57.6歳)を対象とした。斜視の内訳は片眼上斜筋麻痺3例、片眼上直筋麻痺1例、片眼動眼神経麻痺1例、球後麻酔後の眼球運動障害1例、原因不明1例であった。各症例に対し、斜視手術前、術中、術終了時、術後10日目、術後3か月目に本装置を用いた回旋偏位の測定を実施した。
【結果】斜視手術前の眼位は全例が外方回旋(Ex8°~Ex18°)を示し、平均Ex10.9°±3.8°であった。手術は局所麻酔下で術中に残余回旋斜視角を確認しながら行い、7例中3例において術中の回旋偏位測定結果を元に術量を変更した。手術終了時の回旋偏位は平均Ex1.3°±2.0°で、手術後10日目の回旋偏位は平均Ex2.7°±2.4°、手術後3か月後では平均Ex3.1°±2.3°であった。手術前は全例で複視を認めたが、術直後と術後10日目では全例が消失し、術後3か月でも7例中6例が複視消失の状態を維持した。
【結論】本装置を用いて斜視手術中に回旋偏位の測定を行うことで、その場で術式の変更や追加の判断をすることが容易となった。本装置の術中利用は、手術回数を最小限にとどめ、術後の良好な眼位を保つために有効であると思われた。

図の解説 Fullsize Image
Cyclophorometerは1対の光学部を固定した8cm×24cmの板状の装置である。左右の光学部には赤色のBagolini線条レンズと、緑色のMaddox rodをそれぞれ垂直方向に配置している。Maddox rodはダイヤルを用いて随意に回転可能であり、1°刻みで設けた目盛りと連動している。装置を通して点光源を観察すると、左右眼それぞれに線条光を知覚する。その際、赤色Bagolini線条レンズを通して観察される線条光は、点光源に由来する輝点を中心とした線条光となるため、その輝点を固視点と定める。使い方は、Cyclophorometerの赤色Bagolini線条レンズ側が固視眼の前に来るように被検者の前額面に平行に保持し、点光源を固視させ見え方を問う。2本の線状光が観察され、互いに平行であれば回旋偏位はない。2本の線状光が平行でない場合は回旋偏位があると判断し、ダイヤルを用いて非固視眼のMaddox rodを回転させていき、見え方が平行となったときの角度を回旋偏位として定量する。非接触で体位を問わず測定できるため、斜視手術中に実施することが可能である。
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© 2015 公益社団法人 日本視能訓練士協会
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