日本視能訓練士協会誌
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一般講演
上直筋単独麻痺を呈した対側動眼神経核障害の一例
古川 真二郎山本 美紗戸島 慎二寺田 佳子原 和之
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2015 年 44 巻 p. 91-95

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抄録

【目的】神経線維が障害された場合の動眼神経麻痺では通常眼筋麻痺は障害側と同側に生じる。今回我々は左中脳梗塞により右眼上直筋麻痺を呈し、動眼神経上直筋亜核単独障害が疑われた一例を経験したので報告する。
【症例】72歳、男性。仕事中に上下複視を自覚し近医受診。精査加療目的で当院神経内科を紹介受診した。頭部MRIでは左中脳内側に高信号域を認めた。発症より4日後、眼球運動精査目的で当科初診。初診時所見、両眼とも矯正視力(1.2)。遠見眼位はAPCTで右眼固視:20⊿外斜視9⊿左上斜視、左眼固視:20⊿外斜視8⊿右下斜視であった。9方向むき眼位検査及びHess赤緑眼に上転制限を認めた。複像間距離は右上方視時で最大となった。左眼の眼球運動には異常を認めなかった。瞳孔は正円同大で対光反射も迅速であった。上直筋の支配神経は中脳で交叉している事より、動眼神経上直筋亜核の障害に伴う対側上直筋麻痺であると考えた。1か月後、上下偏位は消失した。眼球運動は正常範囲内であり、全てのむき眼位で複視は消失した。
【結論】対側上直筋単独麻痺を呈した動眼神経亜核障害の一例を経験した。過去に報告の少ない非常に稀な症例であったと考えられた。

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© 2015 公益社団法人 日本視能訓練士協会
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