日本視能訓練士協会誌
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形の認識:下側頭回における情報処理
藤田 一郎
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1993 年 21 巻 p. 161-167

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抄録

サルの大脳皮質視覚野は,「見ているものが何であるか」を知るのに重要な物体視経路と「見ているものの間の位置関係」を知るのに必要な空間視経路に大別できる.下側頭回TE野は物体視経路の最終段に位置し,この領野が破壊されると,異なった図形を区別したり,以前に見た物体を再認することができない.個々のTE野の細胞は,一般には,物体そのものではなく,物体の部分的な図形特徴に応じている.TE野の中で,似た図形特徴に応答する細胞は皮質表面に対して垂直方向に並び,コラム構造を形成している.コラムの幅は約0.4mmで,TE野背側部には片側2000個のコラムが存在すると見積もられている.個々のコラムに含まれる細胞は,共通の図形特徴に応答するが,細かな点ではその特徴選択性が異なる.このような構造は,多様な物体を識別すると同時に,照明条件や見る角度の変化などによらずに安定した物体認識をするために役立つと考えられる.

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