日本視能訓練士協会誌
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後天性眼球運動障害の視能訓練
深井 小久子
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1998 年 26 巻 p. 49-61

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抄録
1.視能矯正ニーズの変遷
視能矯正は小児の弱視と斜視が主要対象であったが,早期発見と予防・治療の進歩で,重篤な弱視や斜視の感覚運動異常は減少した.1993年には,視能訓練士法に検査業務が明確化され,視能検査が拡充した.21世紀を間近にして視能矯正の社会的ニーズは,乳幼児の健診,成人病検診,リハビリテーション(眼球運動障害),ハビリテーション(Low Vision),高次脳機能(学習障害,重複障害等)の領野に発展がある。本報では高齢社会でニーズが高まっている「後天性眼球運動障害の視能訓練」を報告する.
2.どんな後天性眼球運動障害が増加したか
23年間の後天性眼球運動障害の視能訓練数は296例であった。その発症原因は,外傷(頭部・眼)が第一位,次いで,炎症や脳血管障害があげられる。これは39歳以下と40歳以上でその頻度は異なる。前者は外傷(頭部・眼)によるものが第一位であり,後者では炎症,脳血管障害による眼球運動障害が増加している。
3.教科書どおりの患者はいない
後天性眼球運動障害は眼窩機械的,筋性,眼運動神経,核間などの障害で発症し,部位や程度により訓練の適応や効果が異なる。しかし,視能訓練をすすめる前提として「原因は何か」「どんな症状があるか」「何が不自由か」を分析し患者の実際的ニーズを知る。
4.効果的な訓練法はなにか
相反神経支配の異常と融像異常の状態から視能訓練プログラムを作成した。垂直偏位が水平より大きい場合は眼球運動訓練から輻湊,そして融像訓練にすすむと良好な結果が得られる。
5.訓練により“治った”評価
296例の結果は,治癒度Iは45%,治癒度IIは約44%であった。訓練の最終目標は,日常生活と社会復帰が“できる”満足度である.従って訓練により“治った”という基準には,日常生活での体験的な評価を含めたものが望ましい.融像の向上と日常生活の不自由度(満足度)の関係は必ずしも一致しなかった。
6.視能訓練の社会的意義
視能訓練は専門性が高い機能回復訓練であり,これにより社会復帰が可能なものは約88%ある。後天性眼球運動障害は外眼筋自己受容器系の障害であり,融像機能で視覚性と筋性の眼球位置覚を統合させ再建させることができる。この効果を具体的に示し,社会ニーズに応えていくことは,これからの視能矯正の発展につながる.
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