日本視能訓練士協会誌
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シンポジウム「眼位検査とその評価」Hess赤緑試験
臼井 千恵
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2000 年 28 巻 p. 81-92

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抄録

Hess赤緑試験は、中心窩投影および眼筋におけるHeringの法則・Sherringtonの法則を基盤に、両眼を赤フィルターと緑フィルターによる「色」で完全に分離し、融像を除去した状態で各向き眼位における眼位および眼筋の働きを測定するものである。Hessスクリーン上の●印は15°偏位、◆印は30°偏位を表し、碁盤目の各1辺は5°に相当するため、水平および上下偏位の大まかな定量が可能である。結果は、左右各眼1個ずつのまとまった眼位図として、Hess chartに図示し記録する。臨床では、主として麻痺性斜視の眼位検査として用いられる。
本検査法の利点は、9方向眼位が短時間に測定できること、眼筋麻痺の状態をビジュアル的に把握できるため治療における経過観察が容易であること、検査用紙が全世界共通であるためデータ提供や比較に便利なことである。問題点(限界点)には、回旋偏位が定量できないこと、自覚的検査であり患者の応答を過信する傾向があることなどがあり、微細な偏位も検出するため直接眼球運動を観察して麻痺筋を判定し難い時には有用である一方、斜位が含まれた眼位図であるため、得られた偏位に対する評価を慎重に行う必要がある。
検査に際しては、事前の遮閉試験および視診による眼球運動検査が不可欠であり、得られた眼位図が患者の眼所見を正しく記録しているか否かを常にチェックすることが大切である。

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