日本視能訓練士協会誌
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中心窩移動術と読書能力
阿曽沼 早苗赤池 麻子高見 有紀子岡井 佳恵倉野 美和関本 紀子不二門 尚小田 浩一
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2001 年 29 巻 p. 171-176

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抄録

近年、黄斑変性症に対して中心窩移動術が行われており、術後の視力についての報告も増えてきた。日常生活において読書能力は重要であるが、黄斑変性症の患者の中には、視力と読書能力が一致しない者が少なくない。今回我々は、1999年2月から14か月の間に当科にて中心窩移動術を受け、術前後に検査が可能であった31例を対象に、術前および術後4か月以降(平均7.9月)に遠見視力、近見視力、MNREAD-Jによる臨界文字サイズと読書視力を測定し、比較検討を行ったので報告する。
結果、術前後の遠見視力・近見視力ともに有意な変化はなく、臨界文字サイズと読書視力は改善する傾向にあった。また、術前後の遠見・近見視力の変化に対して読書能力の変化を検討したところ、遠見視力の変化(平均-0.03±0.44)に対して臨界文字サイズの変化(平均0.17±0.35)は有意に(P=0.015)大きく、遠見視力に術前後で大きな変化が認められなかったにも関わらず、臨界文字サイズは改善されることが示唆された。また、近見視力と臨界文字サイズにおいても、近見視力の変化(平均0.04±0.31)に対して臨界文字サイズの変化(平均0.19±0.37)が大きく、近見視力の変化の程度に比較して臨界文字サイズは改善する傾向(P=0.073)にあることが示された。以上より、中心窩移動術前後の視機能の評価法として、遠見視力のみでなく、読書能力を測定することが有用と考えられた。

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