抄録
近年,生産現場では,塗装,冷却,洗浄など可燃性液体の噴霧工程が多く行なわれており,さらに,予期しない液体の漏洩,放出に伴う突発的な噴出も発生している。それに伴って起こる静電気災害の防止対策の確立が求められている。本報では噴霧液体の着火試験装置と漏洩噴出模擬実験装置を試作し,様々な条件において液体漏洩噴出時の静電気による着火危険性を調べた。試料は,灯油,デカン,キシレン,スチレンの低引火性液体,一部の実験では安全性や長時間,大量に使用することを考慮して,水道水を用いた。着火性(MIE)を調べた結果,噴霧状液体は,引火点と関係なく,室温において10mJ以下で着火する。特に,スチレンの場合,4mJという小さい値を示した。MIEは噴霧空間内における着火源の位置に大きく依存し,最も着火し易い領域が存在する。模擬実験装置での実験結果では,フランジ接続部やドレインバルブの締め付け不良,パイプにあいたピンホールなどから液体が噴出した時に,帯電量は液体の種類,ガスケットの材料,噴出孔の大きさなどによって大きく変化する。いずれの場合も,水の帯電量が灯油に比べて1桁大きい。今回の実験では比電荷量及び電界値は静電気による危険なレベルではない,等が明らかとなった。